いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)




















  労働安全衛生  労 働 安 全 衛 生 と は


  “職場の人間関係が一番の労働条件”


    ゆったり働こうキャンペーン






   労働条件や労働環境は、法律や就業規則に書いてあることを履行するだけでは不充分です。
   労働者は誰でも安心して働き続けられる期待を持っています。そのための一番の条件は、
  日常的に労働者同士がお互いの人格を認め合い、信頼し合い、愚痴を言い合える同僚・仲間
  がいることです。仲間はトラブルが発生した時、相談相手にもなり、より早く、よりいい解
  決のための近道となります。

   労働関係論を専門とする熊沢誠氏は著書『能力主義と企業社会』(岩波新書)で「働き続
  けてゆける職場」に必要なものとして「ゆとり」「なかま」「日常の仕事に関する労働者の
  一定の決定権」の3要素を提起しています。
  ゆとりとは、たとえば、勤務中にも一息ついてなかまと話ができるほどの労働密度である
  こと、個性的な余暇生活が享受できるほどの労働時間であること、心身の疲労が重ならない
  こと、もっと端的には、高齢者や女性、病弱者や障害者でもなじみの場で働いてゆけること
  である。……
   なかまとはなにか。仕事の中でおたがいに助け合う。労働環境の改善には協力しあう。あ
  る人の健康上、性格上の事情による仕事の不備を管理者の追及からかばい、その『事情』を
  事由とするその人への冷遇には一緒に抗議してくれる――そんな同僚たちがたしかに実在す
  るとき、私たちは『なかまがいる』という。……
   決定権という概念は、私の含意では、作業集団または労働者個人が仕事のペース、手順、
  方法、そして職種によっては仕事の具体的内容に関して、企業の財務管理の枠内でではあれ、
  れ、一定の決定権を享受できることである。」

    仲間は、与えられるものではなく、

           自分で作るものです

                         ≪活動報告≫ 11.11.3



     厚労省の「4つのケア」

    厚生労働省は、2006年3月31日に「労働者の心の健康の保
   持増進のための指針」を発表しました。
     「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
    その中に「心の健康づくり計画の実施に当たっては、『セルフケ
   ア』、『ラインによるケア』、『事業場内産業保健スタッフ等によ
   るケア』及び『事業場外資源によるケア』の4つのメンタルヘルス
   ケアが継続的かつ計画的に行われるよう、教育研修・情報提供を行
   うとともに、4つのケアを効果的に推進し、職場環境等の改善、メ
   ンタルヘルス不調への対応、職場復帰のための支援等が円滑に行わ
   れるようにする必要がある。」とあります。

   「セルフケア」とは、
     労働者による
     ・ストレスやメンタルヘルスへの理解
     ・ストレスへの気づき
     ・ストレスへの対処
     ・自発的な相談
   「ラインによるケア」とは、
     管理監督者による
     ・職場環境等の把握と改善
     ・個別の相談対応
     ・職場復帰における支援
   「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」とは、
     産業医、人事労務、衛生管理者等による
     ・メンタルヘルスケアの企画立案
     ・個人の健康情報の取扱い
     ・ラインによるケアへの支援
     ・事業場外資源との連携
     ・労働者への教育・研修
     ・相談体制の整備
     ・職場復帰における支援
     ・メンタルヘルス推進担当者の選任
   「事業場外資源によるケア」とは、
     ・メンタルヘルスケア支援サービスの活用
     ・メンタルヘルスケアの専門知識や情報の提供・・・・・・・
     ・ネットワークの形成
   です。


       本物の「4つのケア」

    2000年8月9日に労働省が発表した「心の健康づくりのため
   の指針」は「4つのケア」で心の健康づくりをしていくシステム作
   りを提案しています。
    しかしこれだけでは不充分です。労働者・罹患者の立場に立った
   ケアが必要です。では具体的にはどのようなことなのでしょうか。
    「会社人間」、会社の言いなりにならない自己を確立することが
   必要です。会社への片思いから、会社を “振る” 意識変革ができ
   ると客観的視野が開けてきます。これが本物の「セルフケア」です。
    仲間と自分の存在、価値をお互いに認め合う関係性を確立する努
   力をすることが必要です。
    体調不良者に対する思いやり、権利行使の保証、個性が尊重され
   る職場環境の保証を確保する必要があります。そうするとお互いが
   安心して働けます。そもそも1人ひとりの労働者の立場は弱いです。
   たから仲間を求め、連帯を求めます。そして強くなります。
    「ひとりぽっちじゃない」こう実感できる職場環境作りが本物の
   「ラインによるケア」といえます。
    会社(労働組合の場合も)は、精神疾患の罹患を労働者個人的問
   題として捉え、解決を保健スタッフや外部の医者に丸投げします。
   結果は問題の発生源であった職場環境の改善はおろそかになります。
    労働組合や労働者の要求を受け入れて職場環境改善要求する組織、
   予防する組織を職場の仲間と一緒に作り出さなければなりません。
    本物の「スタッフによるケア」は、「1人を救う医者よりも10
   人の予防する職場の仲間」の存在です。
    本物の「事業外資源によるケア」は、就業規則、制度、法律制定
   の改正による安全・安心の保証です。
    「いじめ(パワハラ)ガイドライン」の制定、防止策の法制化を
   現場の労働者の声を反映させて取り組み、実現させなければなりま
   せん。また就業規則に防止規定を盛り込ませることを労働組合は要
   求していきましょう。

      (『メンタルヘルスの労働相談』(メンタルヘルス
              ・ケア研究会著 緑風出版)から)








   職業性ストレスは、
    個人的な弱さではなく、
     組織的問題の表れ


 ☆ 職業性ストレスとその原因に
  取り組む労働者のための実践的
  アドバイス(EU) 資料出所:欧
   州安全衛生機構ファクトシート(2002年)

   職場におけるストレスの原因
   職場における仕事の段取りの仕方や自分が従
  事する仕事が原因でストレスが生じることがあ
  る。注意すべきリスク要因は、次のとおりであ
  る。
  ・職場における雰囲気(または「文化」)とス
   トレスに対する見方。
  ・自分に対する要求。仕事量が多すぎるか少な
   すぎるか、危険な化学物質や騒音といった物
   理的危険にさらされているかなど。
  ・裁量 - 自分の仕事の進め方に対しどれだけ
   の影響力をもっているか。
  ・職場の人間関係。いじめがあるかなど。
  ・変更 - 変更についてどれだけの情報が与え
   られるか、それらの変更は十分に計画されて
   いるようであるか。
  ・役割 - 自分の仕事をどれだけ明確に理解し
   ているか、葛藤はあるか。
  ・同僚および管理職からの支援
  ・自分の職務遂行に必要な技能をつけるため
   の訓練
   「職業性ストレスとその原因」


   2007年、ILOは『安全で健康な職場
   ディーセント・ワークを現実にする』を発
  表しました。そのなかでイギリスの例を紹介
  しています。

  「労働安全衛生が良好であれば、企業
  レベルでも国レベルでも生産性は向上
  する。イギリスの労働安全衛生機関で
  三者構成の 『安全衛生庁』 の調査に
  よると、主な企業20社で生産性の向
  上が見られた。調査結果を以下にまと
  める:
   安全衛生とビジネス上の利益
    ―イギリス安全衛生庁の事例研究

   労働災害や不健康を防止するための
  積極策を講じることによって、1年も
  しくは数年にわたってビジネス上いく
  つかの利益が得られた。例えば、

   ・欠勤率が大幅に下がった
   ・生産性が向上した
   ・工場が良好にメンテナンスされる
    ため、相当額の節約ができた
   ・損害賠償や保険金支払いが大幅に
    減額した
   ・顧客や請負業者との関係が改善さ
    れて、企業イメージや評判が高ま
    った
   ・契約予備審査の点数が高くなった
   ・仕事に対する士気、意欲、集中力
    が増して、労働者の幸福感が高ま
    った
   ・労働者の定着率が高まった」


  ◆◇ 仕事に関連したストレス ◇◆
   ◆◇(Work-related stress)◇◆
       ILO駐日事務所メールマガジン
       2012.9.28付第124号

  「 4.2.ストレス予防
   ストレスの存在が認識され、ストレス要因が
  確定されたらストレスに対処する行動を取る必
  要があります。ストレスに対する理想的な対応
  は発生を予防することで、これは原因に取り組
  むことによって達成されます。職場におけるス
  トレスの原因のほとんどが職務内容がどのよう
  に設計されているか、そして仕事がどう組織さ
  れているかに関わっています。ストレスに関連
  した危害は職務内容、作業量と作業速度、労働
  時間、参加と裁量の余地、キャリア開発、職務
  上の地位と賃金、組織内における役割、対人関
  係、組織文化、仕事と家庭の関係の9分野に分
  類することができます。」
   「仕事に関連したストレス」
      

   早期発見と予防のため3つの提案

  「今回の特徴は、胆管がんとの関係が知られていなかった1、2ジ
  クロロプロパンなどを労働者が吸ったことで発症したことと、この
  化学物質が規制されていなかったことだ。早期発見と予防のため3
  つの提案をしたい。
   第一に、法的規制がない化学物質でも、健康被害が発生すれば事
  業主の責任だと明確にすることだ。
   ……事業主の責任を法的に明確にすることで、未規制の物質の安
  全対策を十分、実施した上で使うようになるだろう。
   第二に、健康を守るための労働者の知る権利、予防のため職場改
  善に参加する権利を強化、確立することだ。……
   労働者が化学物質対策の決定に参加する権利も欠かせない。……
  労働者が職場改善に関われるように法令を改めるべきだ。
   第三に、医師らが異常な病気の発生などを発見した際、労基署に
  通報するシステムが必要だ。……特定の感染症は発生の報告が義務
  づけられていることにならい、異常事態を医療現場から労基署など
  に通報するシステムを構築すれば、予防に効果的だ。」
  ≪活動報告≫ 13.5.28
  毎日新聞 13.3.14

      

  有害か無害か、危険か安全かの境界は社会的な概念

   チッソの責任追及をしていく中で、医師の原田正純さんは患者や支援者、
  医師たちと学習会を続けます。そのなかで核爆発実験の放射能をめぐる武
  谷三男著『安全性の考え方』と出会います。
   原田さんは、著書『水俣病』の中で孫引きをして紹介しています。

  「死の灰が地球上にふりまかれているときに、一部の学者は、科学的に降
  灰放射能の害を証明することはできないから、核爆発実験は許されると主
  張した。アメリカ原子力委員のノーベル賞学者リビー博士は、許容量をた
  てにとり、原水爆の降灰放射能は天然の放射能に比べると少ないから、そ
  の影響は無視できると主張した。微量の放射能の害はすぐには病気になら
  ない、すなわち急性症状を示さないところに、非常に困難な問題があった
  のだ。
   武谷三男氏らは、『許容量というのは、無害な量ではなく、どんなに少
  ない量でもそれなりに有害なのだが、どこまで有害さを我慢するかの量、
  すなわち有害か無害か、危険か安全かの境界として、科学的に決定される
  量ではなく、社会的な概念であること。害が証明されないというが、現実
  にそういうことをやってみて、そうなるかどうかはじめて証明されるとい
  いうのでは、科学の無能を意味し、降灰放射能の害が証明されるのは人類
  が滅びるときであり、人体実験の思想に他ならないこと。放射能が無害で
  あることが証明できない限り、核実験は行うべきではないというのが正し
  い考えである』ことを明らかにした。
  ≪活動報告≫ 12.7.20


    よろけ撲滅は社長がやらねばならぬ仕事ではないか

    戦後の労働組合の取り組みの流れです。
    終戦直後の1946年6月8日、古河鉱山がある栃木県足尾町で食糧難打開を主目的とした
   鉱山復興町民大会が開催されました。大会には足尾同盟会(後の足尾鉱山労働組合)などの労
   働組合も参加しました。鉱山の機械夫だった蘇原松次郎さんが発言します。
   「日本建設にはまず、地下資源を開発することだ。そのために第一に<よろけ>のない職場を
   つくることだ。第二に罹患者や家族に対して、完全な国家補償が必要である。鉱山に働く労働
   者が安心して働ける社会をつくることが、敗戦日本を立ち直らせる近道である」
    蘇原さんは本社社長から呼びつけられます。馘を覚悟しました。
    同行した足尾同盟会の生田龍作会長が社長に言います。
   「何を馬鹿なことをいう。よろけ撲滅は労働者がやるのではなく社長がやらねばならぬ仕事で
   はないか」
    蘇原さんは事なきをえました。
    <よろけ>(珪肺)撲滅の訴えの波紋はまず金属鉱山の労働組合に広がり、翌年、全日本金
   属鉱山労働組合連合会は珪肺対策と特別法制定を運動目標にかかげました。
    企業も取り組みを始めます。
    このようななかで55年3月「塵肺法」、7月「珪肺等特別保護法」を制定させます。
   (『メンタルヘルスの労働相談』より)
    しかし法律が制定されたからといって、対策が進んだということではありません。
    江戸時代後期から問題が指摘されている塵肺問題はまだ根本的解決に至っていません。
   ≪活動報告≫ 12.2.10

      

     かつてはこんな使用者が

   明治維新後、日清戦争を経て産業革命が進んで労働者が増大すると労働
  環境が及ぼす影響も社会問題となり、生理的、精神衛生上の影響について
  の研究も開始されました。
   1919年2月(大正8年)、倉敷紡績の経営者大原孫三郎は、「社会
  問題研究所」を設立します。

  「孫三郎は社会問題研究所だけでは満足しなかった。
   社会そのものを相手にするだけではなく、経営者としては現実の労働環
  境も気がかりであった。従業員を人間として人格として遇するという以上、
  当然、日々働く環境を健康的なものにしなくてはならない。……倉敷では
  真夏の暑さが少しでも減るように、工場の煉瓦壁に蔦を這わせることにし
  たり、井戸水を循環させる冷房装置をとり入れるなどしてきた。
   万寿工場の換気をよくするため、大きな換気塔も建てた。煙突ならぬ
  『塵突』と呼ばれたこの赤煉瓦づくりの塔は、遠くからもよく見え、倉敷
  の名物にもなった。
   ただ、孫三郎はそうした対症療法に満足せず、社会問題研究所の中に、
  疲労生理実験室を設けさせたが、その担当者である若い医学士暉岡義等に
  目をつけた。……
   孫三郎は快諾し、暉岡の希望通り、万寿工場敷地内の工場と寄宿舎の中
  間の空地に生理学研究所、心理学研究所、栄養研究所などから成る研究所
  をつくり、若手の研究院を揃え、『倉敷労働科学研究所』の名の下にまず
  工場疲労問題の調査研究にとりかからせた。」(城山三郎著『わしの目は
  十年先が見える―大原孫三郎の生涯―』新潮文庫)

   労働科学研究所ではテイラーの「科学的管理法」に対する学問的検討や、
  産業労働の生理学的・心理学的研究が開始されます。
  ≪活動報告≫ 12.4.20
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