いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)



















 こ こ ろ の ケ ア  軍隊の惨事ストレス対策  海上保安官の惨事ストレス対策


    第二次世界大戦中、米軍のどこかの便所に、詩心のある兵士がこんな落書きを書いた。
    語り継がれたのは、本音だからだろう。

     Soldiers who wish to be a hero     英雄になりたい兵士は
     Are practically zero,           ほとんど皆無だ
     But those who wish to be civilians,   けれど民間人になりたい兵士なら
     Jesus, they run into the millions.     かぞえきれないほど何万人も!

            (『アエネアスと機関銃』 アーサー・ビナード著 (『図書』 2006.1号収録))

           (下園壮太著 『平常心を鍛える』 から)


  「1914年にはじまる第一次大戦は、それまでの戦争にはなかっ
  た膨大な数の死傷者を生み出した。『総力戦』という言葉がはじめ
  て使われたことからもわかるように、前線兵士のみならず、一般市
  民にも食糧不足などの深刻な影響が及んだ。また、当初は簡単に終
  結すると思われていた戦闘は、長期の塹壕戦となって前線兵士に心
  身の消耗を強要した。銃砲や戦車、潜水艦、飛行機などの新しい兵
  器が次々に登場したことで、『砲弾ショック』などの新用語が生ま
  れ、また世界初の毒ガスの使用は新たな恐怖と心理的ショックをも
  たらした。
   4年余りに及んだ戦闘が終わったのちには、『戦争神経症』
  (「戦争ヒステリー」)という新しい名の後遺症が残され、その治
  療が精神医学の世界で大きな問題になったのである。
  戦争神経症とは、戦争行為に伴なう様々の不安・恐怖・驚愕などの
  体験が一種の外傷となって起こる精神症状群を指すが、それはとき
  に兵役の回避、戦争からの逃避としてのヒステリー症状(種々の運
  動感覚障害)のかたちをとったりした(戦争ヒステリー)。」
        「ドイツ精神病理学の戦後史」(小俣和一郎)から







  戦争のトラウマで心病む人が

   今も銃持ち我が町に住む

          (アメリカ)

          2019・7・28 朝日歌壇

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      教訓1

        作詞 上野瞭 加川良
        作曲 加川良

  命はひとつ 人生は1回
  だから命を 捨てないようにネ
  あわてると つい フラフラと
  御国のためなのにと 言われるとネ
  青くなって しり込みなさい
  にげなさい かくれなさい

  御国は俺たち 死んだとて
  ずっと後まで 残りますヨネ
  失礼しましたで 終るだけで
  命のスペアは ありませんヨ

  命をすてて 男になれと
  言われた時には ふるえましょうヨネ
  そうよ あたしゃ 女で結構
  女のくさったので かまいませんヨ

  死んで神様と 言われるよりも
  生きてバカだと 言われましょうヨネ
  きれいごと ならべられた時も
  この命を 捨てないようにネ






  夕焼けや

   無名の兵士

    などいない

         2018・7・15 朝日俳壇

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  2018年6月23日
  沖縄全戦没者追悼式

    「生きる」

  私は、生きている。
  マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
  心地よい湿気を孕(はら)んだ風を
   全身に受け、
  草の匂いを鼻孔に感じ、
  遠くから聞こえてくる潮騒に
   耳を傾けて。
  私は今、生きている。
  私の生きるこの島は、
  何と美しい島だろう。
  青く輝く海、
  岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
  山羊の嘶(いなな)き、
  小川のせせらぎ、
  畑に続く小道、
  萌え出づる山の緑、
  優しい三線(さんしん)の響き、
  照りつける太陽の光。
  私はなんと美しい島に、
  生まれ育ったのだろう。
  ありったけの私の感覚器で、感受性で、
  島を感じる。心がじわりと熱くなる。
  私はこの瞬間を、生きている。
  この瞬間の素晴らしさが
  この瞬間の愛おしさが
  今と言う安らぎとなり
  私の中に広がりゆく。
  たまらなく込み上げるこの気持ちを
  どう表現しよう。
  大切な今よ
  かけがえのない今よ
  私の生きる、この今よ。

  七十三年前、
  私の愛する島が、
  死の島と化したあの日。
  小鳥のさえずりは、
  恐怖の悲鳴と変わった。
  優しく響く三線は、
  爆撃の轟(とどろき)に消えた。
  青く広がる大空は、
  鉄の雨に見えなくなった。
  草の匂いは死臭で濁り、
  光り輝いていた海の水面(みなも)は、
  戦艦で埋め尽くされた。
  火炎放射器から吹き出す炎、
  幼子の泣き声、
  燃えつくされた民家、火薬の匂い。
  着弾に揺れる大地。血に染まった海。
  魑魅魍魎(ちみもうりょう)の如く、
  姿を変えた人々。
  阿鼻叫喚(あびきょうかん)の
   壮絶な戦の記憶。

  みんな、生きていたのだ。
  私と何も変わらない、
  懸命に生きる命だったのだ。
  彼らの人生を、それぞれの未来を。
  疑うことなく、思い描いていたんだ。
  家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
  仕事があった。生きがいがあった。
  日々の小さな幸せを喜んだ。
  手をとり合って生きてきた、
  私と同じ、人間だった。
  それなのに。
  壊されて、奪われた。

  生きた時代が違う。ただ、それだけで。
  無辜(むこ)の命を。
  あたり前に生きていた、あの日々を。
  摩文仁(まぶに)の丘。
  眼下に広がる穏やかな海。
  悲しくて、忘れることのできない、
  この島の全て。
  私は手を強く握り、誓う。
  奪われた命に想いを馳せて、
  心から、誓う。
  私が生きている限り、
  こんなにもたくさんの命を犠牲にした
   戦争を、絶対に許さないことを。
  もう二度と過去を未来にしないこと。
  全ての人間が、国境を越え、
  人種を越え、
  宗教を越え、あらゆる利害を越えて、
   平和である世界を目指すこと。
  生きる事、命を大切にできることを、
  誰からも侵されない世界を創ること。
  平和を創造する努力を、
  厭(いと)わないことを。
  あなたも、感じるだろう。
  この島の美しさを。

  あなたも、知っているだろう。
  この島の悲しみを。
  そして、あなたも、
  私と同じこの瞬間(とき)を
  一緒に生きているのだ。
  今を一緒に、生きているのだ。
  だから、きっとわかるはずなんだ。
  戦争の無意味さを。本当の平和を。
  頭じゃなくて、その心で。
  戦力という愚かな力を持つことで、
  得られる平和など、本当は無いことを。
  平和とは、あたり前に生きること。
  その命を精一杯輝かせて
   生きることだということを。

  私は、今を生きている。
  みんなと一緒に。
  そして、これからも生きていく。
  一日一日を大切に。
  平和を想って。平和を祈って。
  なぜなら、未来は、
  この瞬間の延長線上にあるからだ。
  つまり、未来は、今なんだ。
  大好きな、私の島。
  誇り高き、みんなの島。
  そして、この島に生きる、すべての命。
  私と共に今を生きる、私の友。
  私の家族。
  これからも、共に生きてゆこう。
  この青に囲まれた美しい故郷から。
  真の平和を発進しよう。
  一人一人が立ち上がって、
  みんなで未来を歩んでいこう。
  摩文仁の丘の風に吹かれ、
  私の命が鳴っている。
  過去と現在、未来の共鳴。
  鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
  命よ響け。生きゆく未来に。
  私は今を、生きていく。

    沖縄県浦添市立港川中3年
      相良倫子






  戦争は

   勝っても負けても

    兵が死ぬ

         2017・3・9 毎日川柳

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   「死んだ男の残したものは」

          谷川俊太郎

   死んだ男の残したものは
    一人の妻と一人の子供
    他には何も残さなかった
   墓石ひとつ残さなかった

   死んだ女の残したものは
    しおれた花と一人の子供
    他には何も残さなかった
   着物一枚残さなかった

   死んだ子供の残したものは
    ねじれた足とかわいた涙
    他には何も残さなかった
   思い出一つ残さなかった

   死んだ兵士の残したものは
    こわれた銃とゆがんだ地球
    他には何も残さなかった
   平和ひとつ残せなかった

   死んだ彼らの残したものは
    生きてる私 生きてるあなた
    他には誰も残っていない
   他には誰も残っていない

   死んだ歴史の残したものは
    輝く今日とまた来る明日
    他には何も残っていない
   他には何も残っていない



    へいわって すてき


     へいわってなにかな。
    ぼくは、かんがえたよ。
    おともだちとなかよし。
    かぞくが、げんき。
    えがおであそぶ。
    ねこがわらう。
    おなかがいっぱい。

  やぎがのんびりあるいてる。
  けんかしてもすぐなかなおり。
  ちょうめいそうがたくさんはえ、
  よなぐにうまが、ヒヒーンとなく、
  みなとには、フェリーがとまっていて、
  うみには、
     かめやかじきがおよいでいる。
  やさしいこころがにじになる。

  「ドドーン、ドカーン」
  ばくだんがおちてくるこわいおと。
  おなかがすいて、くるしむこども。
  かぞくがしんでしまってなくひとたち。
  ああ、ぼくは、
  へいわなときにうまれてよかったよ。

    へいわなかぞく、
    へいわながっこう、
    へいわなよなぐにじま、
    へいわなおきなわ、
    へいわなせかい、
    へいわってすてきだね。

      2013年6月23日
      (沖縄慰霊の日)

    沖縄県与那国町立久部良小学校
      1年  安里 有生


 ◆ 「帰還兵のトラウマ治療を担当」
     小児精神科医、ハーバード大学准教授 内田舞著著
      『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書)
    妻に打ち明けた後もAさんの罪悪感とPTSDの症状は続きました。加えて、「あ
   なたのせいではない」とさらっと言い切る妻に関しては、「戦争でのトラウマの体験
   は今の自分にも影響を及ぼし続けている。その苦しみを妻が理解することはできない」
   とAさんはがっかりする様子を見せました。
    Aさんは繰り返し、「誰もが『兵隊本人のせいじゃない』と言うが、実際兵士がど
   んな思いかは理解していないんだ。頭では分かっていても、俺らは『俺らのせいじゃ
   ない』なんて微塵も感じないんだ」と訴えました。「論理的には自分のせいではない
   とわかっていながら、罪悪感から解放されることはない」というAさんの体験がいか
   に複雑で、自身でさえも自分の思いを整理することがいかに難しいかということを話
   し合いました。


 ◆ 「戦争がつくった道徳的負傷(モラルインジャリー)を
      克服するために」
     トム・ヴォス著『帰還兵の戦争が終わるとき 歩き続けた
      アメリカ大陸2700マイル』(草思社)
    軍人になる、軍隊に入るとはとはどういうことか。
   「軍人になるとは、自分の行動はもちろん、みんなの行動に責任を持つことだ。他
   者も罰の重荷を、自分のものとして負うことだ。苦しみを分かち合い、その苦しみ
   という絆によって他者とつながることだ。
    軍隊に入るとは・・・自我を完全に放棄すること。自分の欲求と要求を手放し、
   全体の意思に屈すること。・・・そして巨大な集団に属する単細胞生物として生ま
   れ変わり、何も考えずに他者を支援し、何の御門持たずに行動し、命をかけて自分
   より大きな集団を守るのだ。
    そのような『暗黙の協定』が戦闘経験者と一般市民の間にあると無意識に思い込
   ませられ確信していました。
    『暗黙の協定』は3部構成になっています。
   「第一に、復員軍人は自己完結型で、自己充足型で無私無欲でなくてはならない。
   他者のために生き、自分よりも他者のニーズを優先しなくてはならない。現役中は
   戦友を最優先し、自分より集団のニーズを優先するし、退役したら・・・助けを講
   う側ではなく引き続き助ける側でいなくてはならない。
    第2に、帰還後不調を感じたら自分で対応すること、とされている。一般市民を
   巻き込んだり、市民の支援や知識に頼ったりしてはならない。戦争の恐怖に黙って
   耐えられるだけの勇気がないときや、・・・その事実を多言してはならない。じっ
   と押し黙って、無私の英雄のイメージを損なわないようにしなくてはならない。
    第3に、戦争の痕跡は隠蔽しなくてはならない。それも未来永劫に。地の底に葬
   り去らなければならない。」
   ≪活動報告≫ 21.9.3


 ◆ 「【3・11を想う】元陸将 本松敬史さん
    災害派遣、隊員のメンタルケアを」
     産経新聞 21.3.11
   「――隊員のメンタルヘルス対策は
   『一般論として、人間は悲惨な事象(惨事ストレス)に直面し、これが継続すると
   当該事象を無機質なものとして認知・認識してやり過ごす、いわゆる『自己防衛反
   応』が働く。現地でご遺体の収容に任じた隊員たちは、活動が終わるとさまざまな
   光景が脳裏をよぎり、体調に異変が生じる隊員も散見されたことから、『任務解除
   ミーティング』の手法を取り入れた。
    宿営地の天幕などで5~10人が車座になり、照明を暗くしてその日の活動につ
   いて1人ずつ話していく。犠牲者の姿と自分の家族を重ね合わせ、泣き出す隊員も
   多くいた』
    ――対策は有効に機能したか
   『体系的にやらねば隊員の心が折れてしまうと判断し、手引書を作った。この手引
   書を基に、メンタルヘルスに詳しい『心理幹部』や臨床心理士の資格を持つ隊員で
   チームを組んで現地部隊を巡回、指導した。特にご遺体と接する部隊では解除ミー
   ティングを徹底させ、隊員をまとめる中隊長への助言や、気分のすぐれない隊員へ
   のカウンセリングも実施した。これにより、隊員たちは惨事ストレスが脳裏から少
   しずつ消えていくことを実感できた』
   「【3・11を想う】 」


 ◆ 「凄惨な現場、極限状態の任務…
     陸自隊員の心を支えていた住民からのメッセージ
     スポーツニッポン 21.3.10
   「多くの凄惨(せいさん)な現場を踏んできた隊員たちにとっても名取での捜索は
   極限状態の任務だった。『遺体収容がつらい』。若い隊員から相談があった。任務
   には感情を抑えて当たってきたが、このままでは持たない。『つらかったことをお
   互い話すことによって少しでも精神的なケアになれば』と任務を終えた夜に隊員同
   士がグループになって精神的な思いを話し合える場を設けた。
    災害現場で捜索活動に当たる自衛隊員が、あまりに凄惨な現場で精神的ショック
   (惨事ストレス)を受けることは珍しくない。東日本大震災後、救出活動に当たっ
   た自衛隊員から惨事ストレスに起因したとみられる自殺者が出て問題になった。
   「凄惨な現場、極限状態の任務… 」


 ◆ 「被災地派遣の自衛隊員  6.75%でPTSDの疑い
     朝日新聞 21.3.9
   「研究チームは震災直後に岩手、宮城、福島などに派遣された約5万6千人の陸上
   自衛隊員を6年間追跡した。その結果、6・75%でPTSDの疑いがあった。
    PTSDと労働条件との関係を調べたところ、派遣期間が3カ月以上だと、1カ
   月未満よりPTSDのリスクが75%増えたほか、派遣期間が終わった後に休日出
   勤や残業が3カ月以上続いた人は、ほとんどなかった人に比べ61%高かった。
    津波で亡くなった遺体を回収したり、原発事故の避難地域での活動で被曝(ひば
   く)リスクにさらされたりした隊員は、そうではない隊員に比べて18~19%ほ
   どPTSDのリスクが高かった。
   「被災地派遣の自衛隊員 」


 ◆ 「自衛隊員のストレス・メンタルヘルスに関する文献研究」
     野田 哲朗  吉川 夕凪
     兵庫教育大学 研究紀要 第58巻 2021年2月
   「₃ 惨事ストレスとコンバット・ストレス
    創設以来、戦闘に巻き込まれることのなかった自衛隊では、隊員のメンタルヘス
   の悪化が危惧されたのが災害派遣時の惨事ストレスだったようで、災害派遣時の研
   究がいくつか認められるが、これまでの研究では、自衛隊員の目的意識の高さから
   危惧する必要はながったとの結果になっている。しかし、自衛隊の主任務に国際平
   和協力活動が含まれるようになり、コンバット・ストレスに関心を持たざるを得な
   くなっている。
    自衛隊外部研究者である福浦はコンバット・ストレスを「戦争だけではなく、軍
   事作戦や演習でストレスに晒された軍人にみられる感情的、知的、身体的そして/
   また行動上の反応である。例えば、強度、期間、契約状況、リーダーシップ、効果
   的なコミュニケーション、部隊の士気や結束力、派遣されている部隊の重要度など
   によって変わる」と定義し、PKOやイラク派遣の自衛隊員家族の聞き取り研究に
   おいて、配偶者の苦悩、帰還した夫の精神的不調などコンバット・ストレスが、本
   人のみならず近親者など多岐に渡る影響の大きさを 明らかにしている。」
   『自衛隊員のストレス・メンタルヘルス 』


 ◆ 新聞記事 「命令に従って光州に投入された普通の軍人も歴史の被害者」
     ハンギョレ新聞 20.5.14
   「5・18当時、不当な鎮圧作戦に抗議して上官に殴打され気を失ったこともある
   キムさんは、除隊後に統合失調症との診断を受けた。キムさんは離婚などで正常な
   生活が不可能となり、国家有功者として認めてほしいと申請したが拒否され、訴訟
   を起こした。
    5・18有功者たちの「外傷後ストレス障害(PTSD)」を研究してきたオ・ス
   ソン全南大学名誉教授は「命令を下した者が加害者。命令を拒否できなかった投入
   軍人は5・18に投入されたことや心理的苦痛を隠すなど、二重の苦痛に苛まれて
   いる。報勲病院で光州に投入された軍人のトラウマを治癒できるようにすべき」と
   述べた。
   『ハンギョレ新聞』 20.5.14


 ◆ 新聞記事 「東京 PTSDに苦しんだ日本兵家族ら交流の場が完成」
     朝日新聞 20.5.11
   「太平洋戦争の戦地から戻った後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しん
   だ復員兵の家族らの交流スペースが東京都武蔵村山市に完成した。資料や映像の展
   示もあり、一般の人も訪れることができる。
    スペースを作ったのは「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」の
   代表黒井秋夫さん(71)で、今年1月から3カ月かけて自宅の敷地に建てた。」
   「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」
   『朝日新聞』 20.5.11


 ◆ 「カナダにおける軍人のメンタルヘルス対策
    ―国防省と退役軍人省の取組を中心に―
     国立国会図書館 調査及び立法考査局 主幹 社会労働調査室 鈴木 滋
     2020.3
   「1 軍人のメンタルへルス対策とその特徴
    軍人のメンタルへルス対策は、各国とも、基本的には軍隊という組織の強靭性や
   軍事活動に関わる即応性の確保を目的として行われる。この件に関連するが、カナ
   ダでは、連邦軍において「軍務のユニバーサリティ」(universality of service)
   という組織原則がうたわれている。これは、連邦軍の要員は、重要な多くの任務に
   ついて常時対応することができ、また、世界のどの地域への派遣にも即応できる態
   勢を維持していなければならない、という考え方である。
    米国などの主要国では、軍人のメンタルへルス問題を深刻化させている要因の一
   つとして、「スティグマ」(stigma)という問題があると指摘されている。スティ
   グマとは、精神的な強靭性を要求される軍隊にあって、弱さとみなされることを恐
   れるあまり、精神面での治療や支援を求めることを回避してしまう、軍人の心理的
   メカニズムを指しており、軍人のメンタルへルス対策において、その克服は各国で
   大きな課題となっている。
    カナダでは、年間およそ1.000人の軍人が医療上の理由から退役しているが、
   上記の組織原則により、障害を負った多くの軍人が、「任務に適さない」との理由
   から、退役に追い込まれていると指摘する声があり、国防省は、組織原則の運用に
   ついて見直しを検討しているとされる。
    上記の組織原則は、軍人に対し、軍での勤務を希望する限り、肉体的・精神的に
   強くあらねばならないという心理的負荷を与えている可能性があり、軍人のメンタ
   ルへルス対策を進めていく上で、その実効性を損なうおそれもあると言えるだろう。
   『カナダにおける軍人のメンタルヘルス対策』


 ◆ 新聞記事 「見過ごされたトラウマ
     元日本兵「殺してしまった」続く幻聴・幻覚」
     朝日新聞 18.8.16
   「戦場での体験や軍隊生活を原因として、心に傷を負った多くの日本人がいた。し
   かし、そういう人たちは、この社会に存在しないかのように扱われてきた・・・

    山形市で診療所を営む精神科医の五十嵐善雄さんは、ある患者との出会いが忘れ
   られない。
    開業したばかりの2008年、83歳の男性が慢性の統合失調症とある紹介状を
   手に訪ねてきた。月に1回、10分ほどの診察が始まった。男性は一切笑顔を見せ
   ない。『叫び声が聞こえる』という話には、慢性患者とは思えない『生々しい響
   き』があった。
    4年が過ぎたある日。男性は付添人に席を外すように頼んだ。そして、とつとつ
   と話し始めた。
    『上官の命令だった』
    『殺してしまった』
    『子どもの泣き叫ぶ声が耳に残っている』
    およそ70年後の『告白』。顔は青ざめていた。
    学徒出陣で、旧満州へ。戦後4年間はシベリアに抑留。帰国後、幻聴に襲われ、
   自傷行為を繰り返した。40年代後半から30年間、精神科に入院。施設に移った
   後に、五十嵐さんの診療所を訪ねた。
    『告白』後に週1回、30分の面談を重ねると、幻聴や幻覚が、中国で手にかけ
   た人たちの声や表情のフラッシュバックだったとわかった。男性はしばらくして肺
   炎で亡くなった。」
   『朝日新聞』 18.8.16


 ◆ 新聞記事 「5・18の真実を知らせた慶北大生の“寂しい死”」
     ハンギョレ新聞 18.5.18
   「1980年5・18光州民主化運動が起きた時、クォン・スンヒョン氏は慶北大
   歴史教育科の80年度新入生だった。彼は大邱(テグ)で先輩たちと共に5・18
   の真実を知らせる印刷物を作り配布した。」
   「大邱で5・18の真実を知らせたために連行されたクォン・スンヒョン氏は、拷
   問の後遺症で生涯精神疾患を病み、今年3月一人さびしく亡くなった。
    7月には全斗煥政権退陣などを要求してデモをして、大学から無期停学処分を受
   けた。その年の11月には対共分室に連行され、1981年4月には軍に強制徴集
   された。軍でも保安隊に引っ張り回され常習暴行にあった。相次ぐ拷問と暴行のた
   めに精神異常症状が悪化すると、1983年6月結局病気のために除隊した。
    大邱東区の古い住宅を借りて一人で暮らした。結婚と職場生活の機会は閉ざされ
   ていた。お金が必要になると、時々職業斡旋所に出かけて行って金を稼いだ。隣人
   たちはクォン氏を『話すこともなく、夏でもドアを閉ざして閉じこもっていたが、
   優しそうに見えた』と記憶した。クォン氏の兄が時々訪ねてきたが『会いたくない』
   と言ってドアを開けない時もあった。クォン氏は一人で部屋に閉じこもり詩を書い
   ていたという。光州による傷を抱いて、大邱で暮らす人生は孤独だった。」
   ≪活動報告≫ハンギョレ新聞 18.5.18
   ≪活動報告≫ 18.5.18


 ◆ 書評 『兵士というもの
    ドイツ兵捕虜盗聴記録に見る戦争の心理』
     ゼンケ・ナイツェル、ハラルト・ヴェルツァー著 小野寺拓也訳
     みすず書房 2018年4月
   「第二次世界大戦下に、ドイツ軍将校は何を考えていたか。ナチス指導部の分析は
   進んでいるが、兵士の心理については充分に検証されているとはいえない。本書は
   その不透明な部分にメスを入れた貴重な書である。ごく平凡で真面目な庶民が軍服
   に身を包み、殺害に慣れて変身していく様は不気味である。残虐な行為が罰せられ
   ないとなると、つまり道徳も法体系も存在しない空間では人は人でなくなる、とい
   うことも教えてくれる。・・・
    アメリカもイギリスも、ドイツ兵士の捕虜収容所に密かに隠しマイクをいれて、
   その私的な会話を盗聴していた。(評・保坂正康 ノンフィクション作家)
   「書評『兵士というもの 』」


 ◆ 「日本軍兵士 ―アジア・太平洋戦争の現実」
    吉田 裕著 中央公論新社 17.12
   「当時の陣地内は、誰彼なしに、精神心理的に異常に興奮した状態にあって、些細なこと
   にもいらだった。そして、兵のなかには、精神に異常の徴候を現わすものがではじめた。
   戦況が悲観的になるにつれて、突然に発狂した。被害強迫妄想、幻視幻聴、錯視錯聴、注
   意の鈍麻、錯乱、支離滅裂、尖鋭な恐怖、極度の不安、空想、憂愁、多弁、多食、拒食、
   自傷、大声で歌い回るもの、踊り回るもの、なにもかも拒絶するものなど、叡智、感情、
   意志の障害があらわれた。すなわち、極限における人の姿であり、超極度の栄養失調にと
   もなう急性痴呆症の姿であった。(柳沢玄一郎著『軍医戦記 生と死のニューギニア
   戦』)」
   ≪活動報告≫ 18.5.29
   ≪活動報告≫ 18.5.25


 ◆ インターネット 「『対テロ戦』に参加の元米兵
   “心の戦争”終わらず」
    Yahoo!ニュース 17.9.6
   「『9.11』から6回目の9月、ホーさんは2度目のイラク派兵から帰国した。変調は
   ここから始まったという。海を見た時、突然、イラクで溺れ死んだ友人の映像がフラッシ
   ュバックして現れたという。「彼を助けられなかった。ひどい罪悪感があるんだ。それが
   蘇ったんだ」
    それから心の中の戦争が始まった。自分の中には悪魔がいる、と彼は言う。ふさがって
   いたはずの傷口が一気に開いたのかもしれない。
    殺されたイラク人、殺されるかもしれない、仲間が死ぬかもしれないという恐怖。次か
   ら次に「死」が出てくる。「あれから元に戻れない。人生が変わったんだ。酒、自殺願望。
   状況は良くならず、もう『戦争と縁を切るしかない』と」
   「『対テロ戦』に参加の元米兵 “心の戦争”終わらず」


 ◆ インターネット 「自衛隊員、海外派遣でPTSD傾向、自殺も
         南スーダンでは『深い傷』 メンタルケアの重要性」
    BuzzFeed News 17.3.16
   「国連平和維持活動(PKO)のために南スーダンに派遣されている陸上自衛隊が、5月
   に撤退することが決まった。
    『内戦状態にある」とも言われる環境下で、任務にあたる隊員たち。そして日本で不安
   な日々を送りながら、その帰りを待つ家族たち。
    精神科医などの専門家は、彼らが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する可能
   性と、メンタル・ケアの必要性を指摘する。
    いったい、誰がケアを担うのか。防衛省や自衛隊が用意しているケアだけで事足りるの
   か。」
   「自衛隊員、海外派遣でPTSD傾向、自殺も  」

 ◆ 新聞記事 「自衛隊員、全隊員1割にPTSD、うつ 防衛庁調査
       南スーダンPKO 『20隊員 PTSDケア必要』
       防衛省関係者証言 惨状目撃で」
    毎日新聞 17.3.11
   「南スーダンで昨年7月、政府軍と反政府勢力の衝突が起きた。……同省は「派遣隊員に
   過度の精神的負荷がかかったとの報告はない」とする。だが、実際には約20人がPTS
   D発症へのケアを必要としたという。
    毎日新聞は、派遣部隊に事前に実施したメンタルヘルス教育に関する内部文書を情報公
   開請求で入手。それによると、派遣先で疲労やストレスがたまると組織全体に影響が出る
   とし、「特定の人をスケープゴート(いけにえ)にすることで集団の安定を図ろうとする
   動き」が内部で出ることを最も警戒すべきだ――と指摘している。」
   「自衛隊員、全隊員1割にPTSD、 」


 ◆ インターネット 「戦後70年以上PTSDで入院してきた
     日本兵たちを知っていますか 彼らが見た悲惨な戦場」
    BuzzFeed News 16.12.8
   「戦争で心を病み、70年以上が経っても入院したままの日本兵たちがいる。1941年
   12月8日、日本軍が真珠湾を奇襲攻撃し、太平洋戦争が開戦。戦後は、今も続いている。
    絶望的な戦場に投入されて亡くなった日本軍兵士は、200万人以上。生き残った人た
   ちも、身体や心に大きな傷を受けて帰国した。
    いまで言うPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされた元兵士も多かった。なか
   でも、病院暮らしを余儀なくされ、社会復帰できないままになってしまった人たちの存在
   は、あまり知られていない。いまだに入院中の人だっているにもかかわらず、だ。」
   「戦後70年以上PTSDで入院してきた  」


 ◆ 新聞記事『インタビュー 『「戦場に立つということ」
     ~現実味を帯びる海外派兵』
    戦場の心理学の専門家、デーブ・グロスマン
    インターネット 16.9.9
   「『敵を殺した直後には、任務を果たして生き残ったという陶酔感を感じるものです。次
   に罪悪感や嘔吐(おうと)感がやってくる。最後に、人を殺したことを合理化し、受け入
   れる段階が訪れる。ここで失敗するとPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しやす
   い』
   『国家は無垢(むく)で未経験の若者を訓練し、心理的に操作して戦場に送り出してきま
   した。しかし、ベトナム戦争で大失敗をした。徴兵制によって戦場に送り込んだのは、ま
   ったく準備のできていない若者たちでした。彼らは帰国後、つばを吐かれ、人殺しとまで
   呼ばれた。未熟な青年が何の脅威でもない人を殺すよう強いられ、その任務で非難された
   ら、心に傷を負うのは当たり前です』」
   『「戦場に立つということ」 』


 ◆ ドキュメント『兵士は戦場で何を見たのか』
    デイヴィット・フィンケル(ピューリッツ賞受賞のジャーナリスト)著
     古屋美登里訳  亜紀書房
    2003年から2010年まで、8年に及ぶイラク戦争で死亡した兵士の数は、イラク
   治安部隊を含めた連合軍側もイラク側も、それぞれ2万数千人に及ぶ。負傷者はおよそ1
   1万人である。そしてアメリカ兵士の死傷者数がもっとも多かった年が、増派によって駐
   留するアメリカ兵の数が増えた2007年だった。
    2007年7月のバグダット東部です。

   「戦闘開始から1478日目にあたるこの日(2007年4月6日)には、死亡した兵士
   の総数は3000人を超え、負傷した兵士は2万5000人にせまり、アメリカ市民が当
   初抱いていた楽観的な見方が消えてからだいぶ経ち、開戦へと導いた誤算と歪曲が詳細に
   暴かれ、開戦以来ずっと戦争を推進してきた政治的失態も露わになっていた。
    ……
    亀裂は、マーチの所属する中隊だけでなく、第二大隊全体にわたって現れ始めていた。
   6月もひどかったが、7月はさらに最悪な事態が1週間続き――即製爆弾(IED)、銃
   による襲撃、ロケット弾攻撃などが42回に及んだ――重傷者こそ出なかったものの、攻
   撃されたことによる明らかな変化が現れていた。従軍牧師のところには、内密の相談をす
   るために深夜ドアを叩く兵士が増えていた。そのうちのふたりは自殺をほのめかした。基
   地の精神衛生のカウンセラーたちが睡眠補助薬と抗鬱剤の処方を書く回数が増えていった。
   驚くほどの数ではない、と牧師やカウンセラーはカウズラリッチに報告したが、万全の注
   意を払うことになった。規則違反がなされているという噂も増えてきたので、「福利厚生」
   の全体調査がおこなわれ、立派な兵士が所持してはならないあらゆる物が発見された。
    ……
    そしてカウズラリッチ(合衆国陸軍中佐)とカミングズが考えていたのは、最初の亀裂
   が生まれたのは戦争のせいなのか、それとも陸軍が間抜けな馬鹿どもを入隊させざるをえ
   なかったせいなのか、ということだった。」
   ≪活動報告≫ 16.7.5
   『兵士は戦場で何を見たのか』


 ◆ 小説『海は見えるか』
    真山仁  幻冬舎
    被災地の小学校が舞台で、主人公は神戸から派遣された小学校の先生です。先生は、阪
   神淡路大震災で妻と娘を亡くしています。作者自身が阪神淡路大震災で被災を体験してい
   ます。
    担任した女子の児童みなみがふさいでいます。理由は、震災直後に親切にしてくれた自
   衛隊員と1年間近くメールを交換していたのですが途絶えてしまいます。
    先生は、つてを使いながら自衛隊員の消息を探り、駐屯地を訪ねます。
   ≪活動報告≫ 16.3.9


 ◆ 新聞記事『帰還兵「戦争 選挙の道具に」』
    朝日新聞 15.11.11
   「アフガニスタンとイラクからの帰還兵は全米に二百数十万人いる。米シンクタンクのラ
   ンド研究所の研究では、このうち約20%が戦闘体験や恐怖から心的外傷後ストレス障害
   (PTSD)やうつ症状を患っているという。米退役軍人省などによると、すべて退役軍
   人のうち1日平均18~22人が自殺している。」
   『帰還兵「戦争 選挙の道具に」』


 ◆ 記事 『ドイツ・アフガン派兵の実態 派遣地域に「安全」はない』
    ふくもと まさお 『世界』2015年10月号
   「ドイツ国防軍は2014年末までで戦闘部隊の派遣を終え、現在は現地の警察や軍を教
   育するために兵士を派遣しています。
    これまで、アフガン派遣によって自殺なども含めて55人のドイツ兵が死亡しました。
   そのうち、35人が敵の攻撃によるものです。ドイツ兵の死亡が状態化し、ドイツ兵が民
   間人を殺害しまうことが大きな政治問題となっています。
    実際2009年には、ドイツ空軍大佐の命令行われたアフガン北部でのタンクローリー
   への空爆によって、アフガンの民間人数十人が死亡しています。

    ベルリン国防軍病院では、2014人の1年間で、431人のPTSD患者を治療しま
   した。そのうち、204人が新規患者でした。今年前半の6か月だけでも、新規患者はす
   でに134人に上ります。ドイツ国防軍全体では、年間平均で約700人のPTSD患者
   が治療を受けているといいます。そのうちの多くは、アフガンからの帰還兵です。うつ病
   などその他の精神障害も含めると、兵士の約20%が治療中です。
    問題は、兵士が帰還後すぐには自分が心的障害を受けていると認識できません。軍医中
   尉によると、帰還後1年以内に治療を開始した患者の割合は平均で10%にすぎません。」
   ≪活動報告≫ 15.9.8


 ◆ ドキュメント『帰還兵はなぜ自殺するのか』
    デイヴィット・フィンケル(ピューリッツ賞受賞のジャーナリスト)著
     古屋美登里訳  亜紀書房 2015年刊
   「『帰還兵はなぜ自殺するのか』(亜紀書房)の推薦文を書きました。
    イラクに派兵された若い兵士たちの帰郷後の「壊れ方」についての怖いほど細密なレポ
   ートです。
    アメリカの男たちはこの100年戦争に行っては「壊れて」戻ってくるということを繰
   り返してきました。
    戦争に大義があるうちはまだ保ったけれど、ベトナム、アフガニスタン、イラクと戦い
   に大義が失われるにつれて、兵士たちの「壊れ方」は救いのないものになっているようで
   す。……
    『帰還兵はなぜ自殺するのか』を読む限り、アメリカは何も学習しなかったようです。」
       (内田樹氏の推薦文より抜粋)

   「ひとつの戦争から別の戦争へと。2百万のアメリカ人がイラクとアフガニスタンの戦争
   に派遣された。そして帰還したいま、その大半の者は、自分たちは精神的にも肉体的にも
   健康だと述べる。彼らは前へと進む。彼らの戦争は遠ざかっていく。戦争体験などものと
   もしない者もいる。しかしその一方で、戦争から逃れられない者もいる。調査によれば、
   2百万人の帰還兵のうち20パーセントから30パーセントにあたる人々が、心的外傷後
   ストレス障害(PTSD)――ある種の恐怖を味わうことで誘発される精神的な障害――
   や、外傷性脳損傷(TBI)――外部から強烈な衝撃を与えられた脳が頭蓋の内側とぶつ
   かり、心理的な障害を引き起こす――を負っている。気鬱、不安、悪夢、記憶障害、人格
   変化、自殺願望。どの戦争にも必ず『戦争の後』があり、イラクとアフガニスタンの戦争
   にも戦争の後がある。それが生み出したのは、精神的な障害を負った50万人の元兵士だ
   った。」
   ≪活動報告≫ 15.5.19
   『帰還兵はなぜ自殺するのか』


 ◆ 小説 『一時帰還』
    フィル・クレイ (著) 岩波書店
    12編の短編が収められています。軍や隊、兵士の戦闘場面や手柄を取り上げたもので
   はありません。兵士の心情を描いていますが兵士の心情を一般化したものではありません。
   作者自身が海兵隊員としてイラク戦争に派兵されました。その体験とたくさんの兵士に取
   材した1人ひとりの兵士の心情をそのまま描いています。

   「私たちの15番目の戦死者はチャーリー中隊から出た。ニコライ・レヴィン。海兵隊員
   たちは怒り狂った。彼が死んだからというだけでなく、最上級曹長がレヴィンに落ち度が
   あると言ったからだ。
    『俺は友達を作りにここにいるんじゃない。海兵隊員たちを生かしておくためにいるん
   だ』と最上級曹長は言った。レヴィンの死後、数日しか経っていないときに、兵士たちを
   叱咤したのだ。『実際のところは……』……
    最上級曹長は、ほかのほとんどの人たちと同様に、死が説明できるものであってほしい
   のだ。戦死者1人ひとりに理由を求める。……
    イラク派兵を終える頃には、私たちは100人を超える戦傷者を出していた。死者は1
   6人だった。……
    私にとってアメリカでの最大の義務は、16人の戦死者の追悼式を執り行うことだった。
    ……
    帰国後2か月して、ジェイソン・ピーターズが戦傷に屈し、死傷者の数は17になった。
   ピーターズを病院に訪ねたことのある者は、誰もがこれでよかったといった。彼は両手と
   片脚を失っていたのだ。……
    その後の数か月間、数年間に、さらに何人かが死んだ。1人の海兵隊員は交通事故で、
   1人は休暇中に喧嘩し、刺殺された。
    犯罪や麻薬の使用もあった。ジェイムス・カーターとスタンリー・フィリップスは、カ
   ーターの妻を殺し、死体を切り刻んで、自分たちで掘った小さな穴に埋め込もうとした。
   もう1人の海兵隊員はコカインでハイになり、AR-15でナイトクラブを襲撃、1人の
   女に重症を負わせた。コカインをやると自分が無敵のような気分になる。ピリピリと警戒
   している老練兵にとっては、それがいいのだろう。しかし、そのあとに起こることは気に
   入らないはずだ。海兵隊から追い出され、PTSDの治療でVA(復員軍人局)の医療サ
   ービスを受けたくても、受けられなくなる。その手のことは大隊で5、6人の海兵隊員に
   起こる。そのため兵士たちは尿検査で見つかりにくい薬物に切り換え始める。
    最初に自殺したのはエイデン・ルッソだった。休暇中に自分の拳銃でやった。……
    5か月後、アルバート・ベイリンが薬を使って自殺した。ベイリンもルッソも、チャー
   リー中隊出身だった。
    1年後、ホゼ・レイは三度目に戻ったイラクで、自分の頭を撃ち抜いた。」
   ≪活動報告≫ 15.10.9


 ◆ 週刊朝日『安保法制が自衛隊員を殺す イラク機関隊員が語るPTSD』
          週刊朝日 15.8.28
   「1人は04年から05年までイラクに派遣された、当時40代の衛生隊長(2佐)だ。
    ……
    それが、イラクから帰還した後にうつ病を発症。やがて自殺願望がでるようになった。
   首をくくって自殺未遂したこともあった。
    治療のために入院もしたが病状は改善せず、最期は自らの太ももの付け根をメスで切り、
   自殺した。遺書はなかったという。
   『安保法制が自衛隊員を殺す』


 ◆ 新聞記事『誤射 裁かれるのは隊員』
    朝日新聞 15.8.22
   「隊員日不安定さは、心理面にも及んでいた。陸上自衛隊の内部文書『イラク復興支援活
   動行動史』によれば、『心の傷』も問題になっていた。
    『全般的に約2割の隊員にストレス傾向がみられた』
    具体的なストレス症状については書かれていない。」
   『誤射 裁かれるのは隊員』


 ◆ 新聞記事『インタビュー イラク派遣のストレス』
    朝日新聞 15.7.17
   「――2004年から06年にかけてイラクに派遣された陸上自衛隊員のうち、21人が
   在職中に自殺したことが明らかになっています。
   『派遣された約5480人は、精神的に健全であると確認したうえで選ばれた精鋭たちで
   す。そのうち21人が自殺したというのは、かなり高い数字ですね』
    ――そのうち3人は「イラク派遣も原因」と、政府が初めて認めました。
   『因果関係について何を根拠に判断したのでしょうか。自殺は氷山の一角で、イラク派遣
   の影響はもっと深刻なのではないかと私は考えています』」
   『インタビュー イラク派遣のストレス』
   『インタビュー イラク派遣のストレス』


 ◆ 新聞記事 【近未来からの警告~積極的平和主義の先に】
    西日本新聞 15.6.1~6.6連載
   〈1〉ドイツから 「後方は安全」幻想
   〈2〉スペインから テロの脅威 惨劇はある日突然に
   〈3〉米国から 帰還兵、戻らぬ心
    精神安定剤などを大量服用しての自殺。パソコンに遺書が残っていた。「ママ、ごめんな
   さい。(でも)今は幸せです」と。
    01年に起きた米中枢同時テロ。13歳だったジョニーさんは「将来、国のためにテロと
   戦う」と誓った。母の反対を押し切り18歳で海兵隊に入隊。イラク、アフガニスタンで戦
   った。だが09年12月に帰還した時、パーティーでいつも盛り上げ役だった、かつての面
   影はなかった。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
    米国防総省に近いシンクタンク「ランド研究所」によると、01年から続く「テロとの戦
   い」でアフガン、イラクに派遣された200万人以上の米帰還兵のうち、約50万人がPT
   SDや、爆発などによる外傷性脳損傷で精神的な障害を負っているという。民間人の犠牲も
   多い、殺し、殺される戦場での過酷な経験が原因とみられている。
    01年は153人だった現役兵の自殺も、両国での戦闘が激化した05年ごろから急増。
   12年に過去最悪の349人に上り、14年も268人だった。しかも退役兵の自殺者総数
   は不明。帰還兵全体の自殺者総数は、イラク、アフガンでの戦死者約6800人をも上回る
   とみる識者もいる。
    ジョニーさんは10年にも自殺未遂を起こしていた。「元のジョニーに戻ってほしかった。
   その私の気持ちが彼のプレッシャーになっていたのかもしれない」。取材中、ジャニーンさ
   んはそう叫び、自分を責めた。
   〈4〉米国から 「監視社会」 侵害される私的情報
   〈5〉ドイツから 支援任務「戦死」隠す国
   〈6〉ドイツから 負の歴史、街に刻み
   西日本新聞 15.6.1~6.6連載
   ≪活動報告≫ 15.8.28


 ◆ 『自衛隊員の自殺、殉職等に関する質問主意書』
    提出者 阿部 知子  平成27年5月28日提出  質問第246号
   「一 平成十五年度から平成二十六年度の各年度における自衛隊員の自殺者数について、以
   下の分類により示した上で、政府として自衛隊の任務及び訓練等の特性と自殺との因果関係
   等自衛隊員の自殺を巡る状況について如何なる分析をし、評価をしているか答えられたい。
    ①陸上自衛官、海上自衛官、航空自衛官及び事務官等の別
    ②年齢階層の別
    ③階級の別
    ④自殺原因の別かつ陸上自衛官、海上自衛官、航空自衛官及び事務官等の別」
   『質問主意書』

   『回答書』
   「平成15年度から平成26年度までの各年度における自衛隊員の自殺者数について、①陸
   上自衛官、②海上自衛官、③航空自衛官及び④事務官等(防衛省の事務次官、防衛審議官、
   書記官、部員、事務官、技官及び教官をいう。以下同じ。)の別にお示しすると、次のとお
   りである。
    平成15年度 ①48人 ②17人 ③10人 ④ 6人
    平成16年度 ①64人 ②16人 ③14人 ④ 6人
    平成17年度 ①64人 ②15人 ③14人 ④ 8人
    平成18年度 ①65人 ②19人 ③ 9人 ④ 8人
    平成19年度 ①48人 ②23人 ③12人 ④ 6人
    平成20年度 ①51人 ②16人 ③ 9人 ④ 7人
    平成21年度 ①53人 ②15人 ③12人 ④ 6人
    平成22年度 ①55人 ②10人 ③12人 ④ 6人
    平成23年度 ①49人 ②14人 ③15人 ④ 8人
    平成24年度 ①52人 ② 7人 ③20人 ④ 4人
    平成25年度 ①47人 ②16人 ③13人 ④ 6人
    平成26年度 ①43人 ②12人 ③11人 ④ 3人」
   『回答書』
   ≪活動報告≫ 15.8.28
   ≪活動報告≫ 15.7.3

 ◆ 新聞記事『イラク派兵のストレス
    隊員の自殺21人 数字以上の申告さ 分析し教訓生かせ』
    朝日新聞 15.7.17
   「当時、勤務していた自営隊中央病院に、帰国後、調子を崩した隊員が何人も診察を受けに
   来ました。不眠のほか、イライラや集中できない、フラッシュバックなど症状はさまざまで
   した。イラクでは体力的に充実し、精神的にも張り詰めているためエネルギッシュに働いて
   いたものの、帰国して普通のテンションに戻った時、ギャップの大きさから精神の均衡を崩
   してしまったのです。自殺に至らなくても、自殺未遂をしたり精神を病んだりした隊員は少
   なくないと思います。」
   朝日新聞 15.7.17


 ◆ 新聞記事『憲法解釈変えアフガン派兵 55人犠牲』
    朝日新聞 15.5.30
   「ドイツは治安が比較的安定しているとされたアフガン北部を担当したが、次第に現地の
   情勢は悪化。戦闘に巻き込まれる事例も生じ、ドイツ軍によると02年からISAFの任
   務が終了する昨年までに、帰還後の心的外傷後ストレス障害による自殺者などを含めて兵
   士55人が死亡し、このうち6割強の35人は自爆テロや銃撃など戦闘による犠牲者だっ
   たという。」
   『憲法解釈変えアフガン派兵 55人犠牲』


 ◆ 新聞記事『元イラク帰還米兵が語る戦場
        集団自衛権で、日本が直面する実現とは?』
    志波 玲  ふぇみん新聞 15.1.15
   「シンポでカブーティ三は『保守的な街の育ちで軍隊に入ればヒーローになれると思って
   いた。(旧イラク大統領の)サダム独裁からイラクを救うために戦うと信じていた』と米
   軍入隊やイラク派遣の経緯を振り返り、『非常に浅はかだった』と自省した。
    さらにカプーティさんは多くのイラク帰還米兵が現地での経験から帰国後も苦しみを続
   けていると報告。『罪のないイラク市民を誤って射殺してしまった同僚は、殺された人々
   の影が自室の壁を覆いつくす悪魔を見続けるようになり、ドラッグに溺れ、普通の生活が
   送れず、しまいにはホームレスになってしまった。」
   『元イラク帰還米兵が語る戦場』


 ◆ 防衛省・自衛隊のメンタルヘルス対策
    ―米軍の事例紹介を交えつつ―
    鈴木滋  国立国会図書館 調査及び立法考査局国会分館長
    レファレンス 2015.1
   「1  防衛省・自衛隊によるメンタルヘルス問題の認識
    『防衛白書』にメンタルヘルス関連の記述が登場するのは、平成13(2001)年以
   降である。平成13(2001)年版『防衛白書』には、メンタルヘルスについて、以下
   のような記述がある(平成14(2002)年版も同様)。『自衛隊におけるメンタルヘ
   ルスは、①隊員が自分の心に関心を持つこと、②部隊が無用のストレスを軽減するととも
   に、隊員の変調に気づき適切な対処をすること、③精神疾患や強いストレスで変調を来し
   た隊員に適切に対処し、職場に復帰させること、などの要素から構成される』(9)。平
   成15(2003)年版以降の書きぶりには若干の差異が見られるものの、防衛省・自衛
   隊による、メンタルヘルスの定義は、こういった説明に尽きていると見られる。」
   『防衛省・自衛隊のメンタルヘルス対策』


 ◆ ドキュメント『戦争記憶の政治学
     韓国軍によるベトナム人戦時虐殺問題と和解への道』
    伊藤正子著 平凡社 2013年10月刊
   「徴兵されて軍隊に入ったのは1965年5月。翌1966年0月にベトナムに派遣され、
   約5カ月後の1967年に帰国した。……
    駐屯したのはチャビンドンという村だった。『民間人に対して不要な殺傷をしてはいけ
   ない』と教えられたことは一度もなかった。戦場では動くもの全てが敵に見える、それで
   動くものに向かって銃を撃つことになる。自分の安全のためにはそうなってしまう。戦闘
   に従事するうち、戦友を殺されて復讐に燃え、人を殺すことにどんどん無感覚になってい
   った。
    心に深い傷となって残った事件は1967年2月に起こった。ある日、チャビンドンの
   村で他の部隊が捕まえてきていたべトコン容疑者を、自分を含め4人の韓国兵で処刑した。
   穴を掘らせ、4人で銃で撃ち殺した。しかし戦争で既に人を殺すことに全く無感覚になっ
   ており、血がついたままの服でそのまま昼食を食べていて、小隊長に『服を着替えて食べ
   ろ』といわれたほどであった。
    ……
    自分の感覚では、戦友会の人たちの中でも、ベトナムでの民間人虐殺事件についての報
   道や活動に反発する人たちは、実際の戦闘に参加していなかった人も多いように思う。つ
   まり、参加する地位や立場になかった人々。参加した人間のうち、約3分の1は戦闘自体
   には参加しておらず後方部隊や支援の立場にあり、そういう人たちは戦闘の実際の経験が
   ないために、虐殺などしていないと反発する人が多い。逆に実際に戦闘に参加した人たち
   は、この問題に関して沈黙するだけで過激に攻撃してくることは少ない気がする。参戦軍
   人は32万人もいるので、いろいろな人がいる。過激な行動をとる人たちは100―20
   0人くらいではないか。」
   ≪活動報告≫ 17.1.12


 ◆ 小説『兵士たちの肉体』
    パオロ・ジョルダーノ(イタリア) 早川書房 2013年邦訳刊
    イタリアの作家、パオロ・ジョルダーノの『兵士たちの肉体』はフィクションですが、
   11年9月23日のアフガニスタン西部ヘラートでの戦闘などを下敷にしています。
    生き残ったチェデルナは少佐の心理学者からカウンセリングを受けます。

   『……そこで君には何ひとつ包み隠さず、自由に話してもらいたいのです』フィニッツィ
   オは前置きを終え、待ちの姿勢に入ろうとしたが、チェルナンデはすでに反撃の構えを整
   えていた。
   『失礼ですが、少佐、自分には何も話したいことがありません』 ……
   『少佐、あなたはここが怖くて、ちびっているんだ。本当はこの手の危ない場所からうん
   と離れた安全なオフィスでのんびりしたいんでしょう。それがこんなところまで飛ばされ
   ちゃって。お気の毒です』  ……
   『そうか。きっと今の君は、ひとと会話をするのがひどく苦痛なんだろう。怒り以外の感
   情を表現するのが難しい時期なんだ。何もかもがまだ生々しくて、我々は痛みに口を閉ざ
   してしまう。
    記憶の蓋を開けてしまえば、耐えられないほどの苦しみがあふれ出すのではないかと心
   配なんだろう。でも僕は、そんな君を支えるためにいるんだよ』 ……
    チェデルナは思わず立ち上がり、上官にのしかかるような格好で迫った。『思ったまま
   のことを申し上げて本当によろしいんですか、少佐?』
   『是非、聞かせてほしいね』
   『では、申し上げます。あんたは気色悪いくそったれだ。我々は痛みに口を閉ざす、だっ
   て?
    “我々”って誰だよ? あんたはあそこにいなかった。どこか遠くで、くだらねえ心理
   学のマニュアルでも読んでたんだろう? なあ、海軍の少佐殿、あんたみたいな連中はよ
   くいるぜ。大学出の仕官はみんなそうさ。あんたら、なんでも知っているってツラしてや
   がるが、その実なんもわかっちゃいねえ。無知もいいとこだ! 他人の頭に入り込んで、
   あれこれ漁るのが好きで好きでたまらないんじゃありませんか? 俺の打ち明け話が聞き
   たくてうずうずしてやがるんだ。そうでしょうが? ……以上。面談終わり』


 ◆ 『東日本大震災への対応に関する教訓事項(最終取りまとめ)』
    防衛省 12.11
     (最終取りまとめ)
 ◆ 『東日本大震災への対応に関する教訓事項について(中間取りまとめ)』
    防衛省 12.8
     (中間取りまとめ)


 ◆ アメリカ 『帰還後に自殺する若き米兵の叫び』
    アンソニー・スウォフォード(作家)
    『Newsweek』 日本版  2012年8月7日
   「アメリカでは毎日18人前後の元兵士が自ら命を絶っている。アフガニスタンとイラク
   からの帰還兵だけでも自殺者は数千人にも上り、戦闘中の死者数(6460人)を上回る
   とみられている。
    計11年にわたる2つの戦争は、米軍に大きな負担を強いてきた。イラクかアフガニス
   タンのどちらかに送られた兵士の数は推定230万人。このうち80万人は2回以上派遣
   されている。
    ポートランド州立大学(オレゴン州)のマーク・カプラン教授(地域保健学)が、全米
   暴力死報告システムのデータに基づき語ったところによると、男性帰還兵の自殺増加率は
   一般男性の2倍、女性帰還兵の自殺率は一般女性の3倍に上る。また元兵士が自殺に銃を
   使う可能性は、一般人よりも60%高い。」
   『帰還後に自殺する若き米兵の叫び』


 ◆ 新聞記事 『光州(クァンジュ)市民軍出身の医師“5月の傷”を治癒』
    『ハンギョレ新聞』 2012年7月4日
   『ハンギョレ新聞』
   「『5・18光州(クァンジュ)虐殺や拷問のような国家暴力の被害者は、数十年が過ぎ
   たけれどもいまだに怒り、酒を飲み、事故を起こし、うつ病になります。性格の問題では
   ないのに個人の責任のようにされてきました。』国家暴力被害者の精神は傷つけられたそ
   の瞬間をほんの一寸も抜け出せないまま、さ迷い徘徊しているという。2009年の統計
   を見れば、5・18の負傷後遺症死亡者380余名のうち自殺者が41名(10.8%)
   だ。経済協力開発機構(OECD)会員国の平均自殺率0.02%より300倍も高い。」
   ≪活動報告≫ 18.5.18
   ≪活動報告≫ 14.5.13
   ≪活動報告≫ 12.8.10

 ◆ 『"5・18被害者治癒センター すぐにも必要"』
    『ハンギョレ新聞』2012年3月28日
   『ハンギョレ新聞』
   「5・18民衆抗争被害者の精神的損傷と情緒的障害を治癒するための国家暴力トラウマセン
   ターの設立が具体化されている。・・・
    また、5・18傷痍後の自殺者比率は10.4%で一般人の500倍に達するという調査も
   報告した。遺族会資料を見れば5・18被害者の内、1980~2011年の自殺者は計42
   人で、平均年齢は47才だった。80年代には25人、90年代は3人、2000年以後は1
   2人で最近頻度が再び高まっている傾向を見せた。」


 ◆ アメリカ 『「アフガンの米兵銃乱射事件」で窮地に立ったオバマ政権』
    冷泉 彰彦
    『Newsweek』 日本版  2012年3月14日
   「アフガン派兵軍の米兵がアフガンの住宅に押し入り、非戦闘員に対して銃を乱射し女性
   や子供など16人を殺害したというニュースは、アメリカでは連日大きな扱いで報道され
   ています。TVの各局はトップ扱い、新聞も一面トップが続いています。
    現時点での報道は、基本的には単発の犯罪だとしながらも、PTSDを発症した兵士に
   ついて十分な治療もなしに戦線へ戻す中で起きた事件であり、そこには軍の構造的な問題
   があるというトーンの報道が大勢です。中でも、この犯人が所属していた米本土ワシント
   ン州にある「ルイス=マコート連合基地」が事件のカギを握っているのではないかと言わ
   れています。
   『「アフガンの米兵銃乱射事件」で窮地に立ったオバマ政権』
   ≪活動報告≫ 14.7.4


 ◆ 『コンバット・ストレスと軍隊
     ─トランスナショナルな視点とローカルな視点からみた自衛隊─』
    福浦 厚子
    『滋賀大学経済学部研究年報』 Vol.19  2012
   「コンバット・ストレスについてのこれまでの研究は,古いものでは南北戦争期(186
   1-1865年)にまで遡る。戦闘状況における強いプレッシャーから‘crazy’[Howe
   1946]と呼ばれる精神医学上の問題を生じさせた兵士を前線から下げることにしたと
   いう。前線へ送りこむことのできない人員を少しでも減らす目的から,コンバット・スト
   レスについての研究が行われるようになった。また当時,アメリカ陸軍軍医として従軍し
   ていたダ・コスタは戦闘状況下での兵士の脈拍上昇,呼吸困難,心臓発作に似た症状を指
   して Soldier’s Heart やダ・コスタ症候群などと名付けた[Da Costa 1871]。
    第二次ボーア戦争(1899-1902年)の際には,多くの英国軍兵士が強い動悸や
   不安,意欲喪失,筋肉の震え,めまい,血圧や脈拍の変化といった症状を現すようになり,
   心臓障害(disordered action for the heart; DAH)と診断され,除隊するものが続く
   ようになった。はじめはきつい帯ひもと装備が原因と考えられていたが,のちにこの症状
   は戦闘経験に起因する戦闘後障害(post-combat disorder)ではないかと考えられるよう
   になった[Murray 1918]。
   『コンバット・ストレスと軍隊』


 ◆ (JB 寄稿論文) 『大震災と戦力回復』
    山下輝男
   「(5) メンタルヘスについて
    災害派遣において、メンタルヘスを組織的実施したのは今回が初めである。小生の経験
   で恐縮だが、熊本隊長を拝命してい際に天草水害災派遣出動、土石流に飲み込まれたお婆
   さんを約1週間後発見収容した。流石に若い者は手を拱いて見守るのみであったし、その
   夜中に奇声を発した隊員も居た。一名においてすらそうなのだから、数限りなくそういう
   場面に遭遇したら精神的ショックが大きいだろうし、心的外傷後ストレ障害(PTSD)
   に陥る者が居ことはある意味では当然であり、それ故にメンタルヘスを行わねばならいの
   である。
   『大震災と戦力回復』


 ◆ 衆議院議事録 『衆議院内閣委員会』 2012.3.議事録
     質問者  玉木 デニー
    東日本大震災に出動した自衛隊員のメンタルヘルスの状況が報告されています。
   『議事録』
   『読売新聞』12.3.7
   「渡辺副大臣 東日本の大震災で派遣をされました隊員メンタルヘスについて……陸自衛
   隊五万八千十人を帰隊後一カ月調査したところ、PTSD等の原因となる高リスク者がお
   よそ3.3%、うつ病等の高リスク者がおよそ2.2%でございます。
    海上自衛隊については6112人を対象に調査しところ、PTSDの高リスク者が4.
   3%でございます。……もう既に5名の海上自衛隊員がPTSDと確認をされておりまし
   て、現在はケアを受けながら職場復帰をしているところでございます。
    また、航空自衛隊においては3119名のうち7.5%がPTSD高リスク者、ちょっ
   と対象人員が違うんですが、うつ病の高リスク者が2819中6.5%。ここではPTS
   Dは確認をされておりません。
   ≪活動報告≫ 12.3.30

 ◆ 資料 「東日本大震災に関連した自殺を防止するための取組の一層の推進」
     総務省
   「ⅳ)防衛省では、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊それぞれにおいて、東日本大
   震災の被災地に派遣され帰隊した隊員等を対象として、精神障害に関するスクリーニング
   を実施した結果、①陸上自衛隊において、回答者5万8.050人のうち、PTSDの原
   因となるトラウマ症状の高リスク者が約3.3%、うつ病等の高リスク者が約2.2%、②
   海上自衛隊において、回答者6.112人のうち、PTSDの原因となるトラウマ症状の高
   リスク者が約4.3%、③航空自衛隊において、PTSDの原因となるトラウマ症状の高リ
   スク者が回答者3.319人のうち約7.5%、うつ病等の高リスク者が回答者2.829人
   のうち約6.5%みられたとの結果が出ている。その結果、問題があるおそれがある隊員に
   対しては、臨床心理士等によるカウンセリング等の対応が行われている。
   「東日本大震災に関連した自殺・・・」
   「被災地に派遣された自衛隊・・・」


 ◆ 『あるイラク戦参戦兵士の最期』
    ハンギョレ新聞 2012年1月4日
   『ハンギョレ新聞』12.1.4
   「新年初日に起きた2件の銃器乱射事件の犯人に指名され注目を集めたイラク戦参戦兵士
   が2日、米国、ワシントン州レイニア山国立公園で凍死体で発見された。年末のイラク完
   全軍撤収という任務を成しとげたという歓声が起きる前に、米国社会は再び参戦兵士たち
   の“外傷後ストレス障害”という重い宿題に直視することになった。」


 ◆ 本 『平常心を鍛える 自衛隊ストレスコントロール共感が明かす
     「試練を乗り切るための心の準備」』
    下園 壮太  講談社+α新書  2011年10月刊
   「ヒトは、1人では大自然や猛獣に勝てない。仲間を失うことも多いだろう。そのとき関
   わった全員に、「自分の制だ。自分は何をすればよかったのだろう」と真剣に考え続けさ
   せ、準備させ続けることで、少しでも次の悲劇を避けようとしているのだ。
    ……
    このように見てくると、罪悪感は、私たち人類には必要な感情(苦しさ)であることが
   わかる。とても苦しい感情だが、仲間を守ろうとする気持ちから生じているので、その本
   質は“愛”。自責感は愛の変化形なのだ。
    ……
    冷静に考えると、生き残った人々は、そんなに自分を責め、消耗する必要はない。むし
   ろ、これからの再建のためにエネルギーを使ってほしい。」


 ◆ 記事 『被災地派遣の幹部自衛官、相次ぎ自殺
         「丁寧なメンタルケアが必要」の声』
    JCASTニュース 11.10.22
   『被災地派遣の幹部自衛官、相次ぎ自殺』
   「自衛隊では旧日本軍と同じで、『隊員はいくらでも代わりがいる』と思っているところ
   がある。たとえば今回の震災で捜索に当たった隊員は、多くの遺体などを目にして相当な
   ショックを受けたはず。十分な休息が必要なのに、帰還した隊員たちは普段通りの厳しい
   訓練を続けている。すでに訓練のための予算が出ているからです。一方で上層部は震災救
   助の実績などをもとに、さらなる予算を取ることしか考えていない」
    さらに『男社会』の自衛隊では『弱音を吐けない』『できないとは言えない』雰囲気が
   強く、酷いいじめに遭ったり理不尽な仕事を押し付けられたりしても、そのまま抱え込ん
   でしまい自殺にいたるケースが後を断たないという。『外部委託のはずのカウンセリング
   も実際には自衛隊OBが運営しているなど、外からのチェックが機能していない』」
   ≪活動報告≫ 11.4.4


 ◆ 『ヴェトナム帰還兵のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の形成
      トラウマと兵役をめぐる言説』
    イザンベール 真美
    九州国際大学法学論集 第17巻 第3号(2011年)
   『ヴェトナム帰還兵のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の形成』
   「PTSDはトラウマをめぐる二つの研究潮流から生まれた。一つはフロイト(Sigmund
   Freud)やジャネ(Pierre Janet)に代表される、19世紀末から20世紀初頭の幼少時の
   家庭内性的虐待を受けた女性達のトラウマ、いま一つは第一次大戦前後の兵士や将校に見
   いだされた、いわゆる『戦争神経症(War Neurosis)』である。現在、天災、事故、犯罪、
   強制収容所の生存者、幼少時の性的虐待や家庭内暴力の被害者、そして帰還兵まで、幅広
   い範囲でのトラウマを病因とみなす、『心的外傷後ストレス障害(PTSD)』は前述の
   二つのトラウマ研究史の後者、戦闘体験のトラウマを訴えるヴェトナム帰還兵を中心とし
   た運動の中、1980年にアメリカ精神医学会(APA)が認めたことにより、公式な
   『精神障害』となったものである。」
   ≪活動報告≫ 14.7.4
   ≪活動報告≫ 14.1.7
   ≪活動報告≫ 13.5.24


 ◆ 第177回国会 参議院外交防衛委員会
    2011年8月4日
   ○岸信夫君 ……
    そのためには、今政務官からも言及ありましたけれども、報告、報告といいますか、気
   軽にカウンセリングを受けられる、そういう雰囲気というものをつくっていかなければい
   けないんだと思うんですね。我々は強いんだと、強いから大丈夫なんだというだけではい
   けないと思いますし、どうも最近、そういうことが少し部隊の中で逆に見られるんじゃな
   いかということもうかがえます。そういうことでは、本来それで乗り越えられればいいん
   ですけれども、そういう状況じゃないわけですから、是非絶え間なくやっていただきたい。
    実はこの間、ちょっと、若干ショックを受けたのは、私がいたときと同じポスターが、
   メンタルヘルスのポスターが部隊内に掛かっていました。ずっと同じメッセージを続ける
   というのがいいのか悪いのかという議論はあるかもしれませんけれども、逆にそれを見て、
   本当に常にそういったことが考えられているのかどうか、防衛省の中で、それも一方で心
   配になったところです。
    ですから、その点については、特にこういう大災害があったわけですから、皆さん大変
   なストレスが掛かっている。イラクと比較するわけにはいかないと思いますけれども、御
   遺体を扱わなければいけないという意味ではこれまでなかったことだと思います。そうい
   う意味で、引き続き力を入れていっていただきたいと思います。
   「議事録」


 ◆ 『東北方面隊で実施した「心の健康診断」2009年度結果(第2報)
     ―特に臨床心理士との個人面談に関して―』
    『防衛衛生』 2011年8月号
   「心の健康診断」結果


 ◆ 『フランス陸軍の国外活動におけるメンタルヘルスケア』
    『陸戦研究』 23年5月号
    フランス陸軍の国外派遣兵士に対する帰国後のメンタルヘルスケアの実例と、ケアを
   必要と捉えるに至った経緯について触れています。


 ◆ 新聞記事 『惨事ストレス限界 長引く遺体捜索、
     自衛官らPTSD懸念
    産経新聞 11.5.8
   『惨事ストレス限界』


 ◆ 新聞記事 『【東日本大震災】自衛隊員に精神的ダメージ
     被災地で診療の医師報告』
    産経新聞 11.4.7
   【東日本大震災】


 ◆ 新聞記事 『ルポ アメリカ 帰還兵深い傷』
    朝日新聞 10.10.24
   「中間選挙を来月2日に控える米国で、米兵約5千人の命を奪った『2つの戦争』は、話題
   に上らない。世論の約8割は戦争の反対し、年間10数兆円を費やす戦争を『戦う価値がな
   い』と切り捨てる。そこには、危険を承知で戦地に向かう米兵たちと、米国社会との目に見
   えない溝がある。」
   『ルポ アメリカ 帰還兵深い傷』


 ◆ 韓国 「将兵58人 ‘生き残った者の哀しみ’」
    ハンギョレ新聞 2010.7.3
   『ハンギョレ新聞』
   「生存者58人は大部分‘外傷後ストレス障害’(PTSD)等に罹っており、精神科のカウン
   セリングを受けている。事故前には天安艦を“‘我が家”と呼ぶほどに戦友愛が深かった天安艦
   乗務補助員たち。生存将兵たちは『私たちの家族46人にとても会いたい』とし、亡くなった
   同僚たちに対する申し訳ない思いと懐かしさを隠すことができないという。
    天安艦乗務補助員の中で亡くなった46人と生存将兵58人に対する処遇は天と地の差ほど
   に違う。」


 ◆ 『ドイツ人の戦争』
    週刊ドイツ・ニュースダイジェスト 2010.5
   「2010年4月は、ドイツ連邦軍にとって創立以来最も犠牲者が多い月となった。・・・
    グッテンベルク国防大臣がクンドゥズで3人が戦死した後に発表した談話の中で認めてい
   るように、ドイツ軍は第二次世界大戦後初めて、本格的な戦争に加わっているのだ。・・・
    戦後半世紀にわたって軍事介入については消極的な態度を保ち、血で手を汚すことがなか
   ったドイツは、今や「Unschuld(罪のなさ、純真さ)」を捨てて米国や英国と同じく「戦う
   国家」に変身したのだ。」
   『ドイツ人の戦争』


 ◆ military.com 『トラウマは累積される』
    2010.4.12
   『トラウマは累積される』
   「ヴェンダービルト大学准教授で、湾岸戦争で海兵隊を担当した海軍の心理学者ポール・
   ラーガン博士(Dr. Paul Ragan)は、兵士は警察官や消防士とおなじく、繰り返されるス
   トレスに直面し、それは積み上げられていくといいます。『肝心なのは、トラウマは累積
   されると言うことです。
    それは脳の中にそれ自身を埋め込み、振り払うことが出来ないのです』。」


 ◆ 『自衛官自殺問題に対する鳩山由紀夫内閣の取り組みに関する
     質問主意書』
    提出者 鈴木 宗男  平成22年2月6日提出  質問第59号
   「国家公務員の中でも、自衛官・防衛省関係者の自殺者が突出して多いことがかねてからの
   問題となっている。平成十六年度から十八年度まで、それぞれ百人、百一人、百一人と、三
   年連続で自殺者が百名を超え、十九年度も八十九名の自殺者が出ている。また、平成十七年
   度に人事院がまとめた十万人当たりの国家公務員の自殺者数十七.七人と比較しても、自衛
   官・防衛省関係者は十八年度十万人当たり三十八.三人となり、国家公務員全体の二倍強と、
   国家公務員の中でも突出して多いことが防衛省自身の調査で明らかになっている。右を踏ま
   え、質問する。」
   『質問主意書』

   『内閣衆質174第198号  平成22年3月12日』
    内閣総理大臣 鳩山 由紀夫
   「自衛官及び防衛省の事務官等の自殺者数は、平成二十年度においては八十三人であり、平
   成二十一年度(平成二十二年二月末までに限る。)においては七十九人である。
    また、平成二十年度の自衛官及び防衛省の事務官等の自殺による死亡率は十万人当たり三
   十三・一人であり、同年度の一般職の国家公務員の自殺による死亡率である十万人当たり二
   十一・七人より高い数値である。」
   『答弁書』
   ≪活動報告≫ 12.7.13


 ◆ 新聞記事 『疲弊する米兵』
    朝日新聞 09.12.6~12連載
   「セクハラ行為が起きるたび、『男のキャリアを傷つけないでくれ』という声が聞こえてき
   た。自分は仲間の1人ではなく、絶えず『女』として見られてると思うようになった。『敵
   がいつ襲ってくるか分らないという心理的負担に加えて、同僚による暴行の恐怖が続いた。
   ミスをしても個人の問題として扱われす、『だから女は』と言われる。必要以上に身構えた。
   『疲弊する米兵』


 ◆ 『主要記事の要旨 メンタル・ヘルスをめぐる米軍の現状と課題
     ―「戦闘ストレス障害」 の問題を中心に―』
    鈴木 滋  『レファレンス』 2009. 8
   『メンタル・ヘルスをめぐる米軍の現状と課題』


 ◆ アメリカ 『戦場の日々を愛し過ぎて』
    ダニエル・ストーン、イブ・コナント(ワシントン支局)
    ジョン・バリー(軍事問題担当)
    Nwesweek 2009.7.22
   「兵士たちをむしばむのは、派遣回数より派遣期間の長さなのかもしれない。陸軍の情報将
   校ジェシカ・オール (42) は、現在ノースカロライナ州のブラッグ基地に配属されてい
   るが、39カ月の戦闘地域への派遣経験を持つ。
    国外への派遣が長期になると、普通の人生を送る上で支障が出てくる。「人生のあらゆる
   ことを保留にしなくてはならない。何一つ決められない」とオールは言う。」
   『戦場の日々を愛し過ぎて』


 ◆ 『自衛隊精神科医療とメンタルヘルスの溝をどう埋めるか
    北部方面隊の精神科臨床の現状と課題』
    戸田 裕之 自衛隊札幌病院精神科
    『防衛医療』 2009年6月号
   「自衛隊は1985年から自殺者数を発表していいます。
   年間60~70人前後で推移していたのが2002年度78人、03年度75人、04年度
   に94人と初めて90人を突破し、05、06年度93人、07年度83人です。(制服組
   のみ)
    この傾向を裏付ける資料が、『防衛医療』2009年6月号に、自衛隊北部方面を統括す
   る自衛隊札幌病院精神科の医師の報告『自衛隊精神科医療とメンタルヘルスの溝をどう埋め
   るか 北部方面隊の精神科臨床の現状と課題』の中に表になって載っています。外来新患数
   は、2000年119人、01年143人、02年196人、03年265人、04年37
    5人、05年251人、06年326人です。02年以降は急増です。
    外来新患者を「国際疾病分類ICD-10」で分類しています。(09年段階での分類)
   F2は「統合失調症および妄想性障害」、F3は「気分(感情)障害、うつ病圏」、F4は
   「神経症性障害、ストレス関連障害」です。
    2000年 F2 11人、 F3 64人、 F4 48人 など。
      01年     6人、    36人、    45人
      02年     6人、    37人、    74人
      03年    14人、    32人、   123人
      04年    13人、    43人、   113人
      05年    14人、    39人、   114人
      06年    14人、    90人、   108人
   となっています。
    入院患者については2000年から2003年までの資料がないが、1999年と200
   4年を比べると入院患者数は99人から141人、そして05年は206人に急増していま
   す。F4の患者数は20人から50人に増え、05年は87人と急増しています。
    北部方面部隊の自殺者数は2000年16人、01年13人、02年19人、03年15
   人、04年14人、05年25人、06年21人です。自殺は体調不良に陥った後、数サイ
   クルを経て発生します。」
   ≪活動報告≫ 15.6.2


 ◆ 新聞記事 『対テロ戦参加 米兵自殺率倍増』
    毎日新聞 09.5.21
   『対テロ戦参加 米兵自殺率倍増』
 ◆ 新聞記事 『テロとの戦いと米国』 第2部 疲弊する兵士
    毎日新聞 09.5.21~25連載
   「08年3月、母のもとに突然の悲報が届いた。1人住まいのアパートでティモシーさんが
   首をつって死んでいるのが見つかったという。地元の退役軍人省病院によると、イラク武装
   勢力によるIED(即席爆発装置)攻撃をうけ、帰還後、外傷性脳損傷(TBI)と心的外
   傷後ストレス障害(PTSD)と診断されていた。死の2カ月前にも自殺を図り未遂に終わ
   っていた。自殺直前にも診断予約に姿を見せないなど『兆候』を見せていた。」
   『疲弊する兵士』①~②
   『疲弊する兵士』③~⑤


 ◆ 新聞記事 『自衛官自殺 対策なく』
    朝日新聞 08.9.26
   「自衛官の自殺者数は年60~70人台で推移していたが、04年度に過去最多の94人達
   し、05年、06年度93人と続いた。07年度は83人とやや減少し、08年も8月22
   日までの約5か月で28人だ。」
   『自衛官自殺 対策なく』


 ◆ 記事 『自衛隊員の自殺が止まらない』
    Internet Zone::WordPress  2008/04/17
   『自衛隊の自殺』


 ◆ 『自衛隊員の自殺防止に向けた防衛省の取り組み
     並びに組織の在り方に対する同省の認識に関する質問主意書』
    提出者 鈴木 宗男  平成20年2月6日提出  質問第59号
   「一 「政府答弁書一」では、防衛省の事務官等を含む自衛官の自殺が国家公務員の中で飛
   び抜けて多いことについて、「防衛省としては、自殺防止対策を強力に推進していかなけれ
   ばならないと認識しており、一般職の国家公務員の自殺の状況をも踏まえつつ、自衛官の自
   殺の原因等について分析及び検討をしているところである。」との防衛省の認識が示されて
   いるが、二〇〇八年二月六日現在、右の自衛官の自殺の原因等についての分析及び検討はど
   の様な進捗状況であるか、具体的に説明されたい。」
   『質問主意書』

   『内閣衆質169第59号  平成20年2月19日』
    内閣総理大臣 福田 康夫
   「一について
    防衛省としては、一般に、自殺は、さまざまな要因が複合的に影響し合って発生するもの
   であり、個々の原因について特定することが困難な場合も多いと考えているが、防衛省にお
   いては、借財が自殺の原因として多いこと、人事異動及び夏季休暇等の時期に自殺が多いこ
   と等を踏まえて、借財等に関する服務指導強化、人事異動時期等に合わせたメンタルヘルス
   強化期間中におけるメンタルヘルスに関する啓発教育等を実施してきており、これら施策が
   より一層効果的になるための方策等を検討しているところである。」
   『答弁書』


 ◆ 『防衛省におけるいじめの実態及びいじめによる自衛隊員の
    自殺防止に対する防衛省の認識と取り組みに関する質問主意書 』
    提出者 鈴木 宗男  平成20年1月7日提出  質問第380号
   「一 自衛隊における上司による部下へのいじめ、または同僚間でのいじめなどいじめの問
   題について、防衛省は詳細を把握しているかとの問いに対し、「政府答弁書」では、「防衛
   省においては、例えば、上位の階級等にある者が、部下等に不法又は不当に精神的又は肉体
   的苦痛を与える行為を行った場合には、事実関係を把握した上で、私的制裁、傷害又は暴行
   脅迫として懲戒処分を行っているところである。」との答弁がなされているが、自衛隊を含
   む防衛省においていじめが発覚した場合、その報告を受け付けて対策を講じる、またはいじ
   めが行われていないかどうかの調査を担当する部局はどこか。
    二 防衛省における、①上司による部下へのいじめ、②同僚間でのいじめの二点について
   報告されている事例、そしてそれを受けた懲戒処分は何件行われているか、直近十年につき
   明らかにされたい。」
   『質問主意書』

   『内閣衆質168第380号  平成20年1月15日』
    内閣総理大臣 福田 康夫
   「一について
    自衛隊法施行規則(昭和二十九年総理府令第四十号)第六十八条において、何人も、隊員
   に規律違反の疑いがあると認めるときは、その隊員の官職、氏名及び規律違反の事実を記載
   した申立書に証拠を添えて懲戒権者に申立てをすることができる旨が規定され、また、同令
   第六十九条において、懲戒権者は、隊員に規律違反の疑いがあると認めるとき、又はこの申
   立てを受けたときは、直ちに部下の隊員に命じ、又は特に必要がある場合は他の適当な隊員
   に委嘱して規律違反の事実を調査しなければならない旨が規定されているところであり、懲
   戒権者は、主に人事担当部署にこのような調査を命じているところである。
    二について
    防衛省においては、例えば、上位の階級等にある者が、部下等に不法又は不当に精神的又
   は肉体的苦痛を与える行為を行った場合には、事実関係を把握した上で、私的制裁、傷害又
   は暴行脅迫として懲戒処分を行っているところであり、「いじめ」として懲戒処分を行って
   いるわけではないため、お答えすることは困難である。」
   『答弁書』


 ◆ 『自衛官自殺問題に対する防衛省の取り組みに関する質問主意書』
    提出者 鈴木 宗男  平成19年11月13日提出  質問第212号
   「一 二〇〇四年から二〇〇六年までの三年間、自殺した自衛官が毎年百人を超え、更に二
   〇〇六年度の自衛官の自殺者数は十万人当たり三十八.三人になり、人事院がまとめた二〇
   〇五年度の国家公務員の十万人当たりの自殺者数十七.七人の二倍強と、国家公務員の中で
   も自衛官の自殺が突出して多いことが防衛省の調べで明らかになった旨二〇〇七年十一月十
   二日付で報じられているが、右の現状について、防衛省はどのような認識を有し、また右の
   背景にはどのような要因があると認識しているか。
    二 防衛省が自衛官の自殺の原因について二〇〇六年度に調査した結果では、最も多かっ
   たのが「その他・不明」の六十三人であると報じられている。最も多くの自殺者の原因が
   「その他・不明」に分類され、その理由が明らかにされていないが、防衛省として、最も多
   くの自衛隊員がどのような理由により自ら死を選んだのか把握すべく、然るべき調査を行っ
   ているのか。」
   『質問主意書』

   『内閣衆質168第212号  平成19年11月22日』
    内閣総理大臣 福田 康夫
   「一について
    防衛省としては、自殺防止対策を強力に推進していかなければならないと認識しており、
   一般職の国家公務員の自殺の状況をも踏まえつつ、自衛官の自殺の原因等について分析及び
   検討をしているところである。
    なお、御指摘の「自衛官の自殺者数」には、防衛省の事務官等の自殺者数も含まれており、
   自衛官のみの平成十六年度から平成十八年度までの自殺者数は、平成十六年度九十四人、平
   成十七年度九十三人、平成十八年度九十三人であり、平成十八年度の自衛官の自殺による死
   亡率は十万人当たり三十八・六人である。
    二について
    防衛省においては、自衛官の自殺が発生した場合には、他の隊員に対するじ後の精神的・
   心理的影響等をなるべく小さなものとするとともに、併せて自殺防止対策に資することを目
   的として、精神医学及び心理学の専門家等を構成員とするアフターケアチームを自殺者が所
   属していた部隊等に派遣しており、このような活動を通じて、自殺の原因の特定・分析に努
   めているところである。
    防衛省としては、一般に、自殺は、さまざまな要因が複合的に影響し合って発生するもの
   であり、個々の原因について特定することが困難な場合も多いと考えているが、防衛省にお
   いては、自殺の原因について可能な限り特定できるよう努めているところであり、「病苦」、
   「借財」、「家庭問題」、「職務」、「その他・不明」という区分に整理して把握している
   ところである。」
   『答弁書』


 ◆ 『組織救援者のメンタルヘルス』
     自衛隊岐阜病院精神科 緒方 克彦、安藤 祐一、古賀 典夫
   「(4)業務の価値付け
    援助業務について従事した個人が組織内で評価され、報いられることは意外に少ないと言
   われます。援助業務の意義・効果については公の広報などでその価値を明確に記載し、組織
   のなかでしかるべき担当者が、援助活動の価値を明確に認め、労をねぎらうことが重要です。
    (5)スタッフミーティングの実施
    事後の反省会やミーティングを適宜にあるいは定期的に実施することは、上記の事項を徹
   底する上で非常に有効です。ただし、責任追及や個人攻撃の場にしないことが重要です。仲
   間内での共感を促し、緊張をほぐすような場であることが望まれます。現場のリーダーとし
   て各人員の健康状態を把握したり、情報を統制したりするための非常に大切な場でもありま
   す。」
   『組織救援者のメンタルヘルス』


 ◆ 『イラク帰還自衛隊員の自殺に関する質問主意書』
    提出者 照屋 寛徳  平成19年11月2日提出  質問第182号
   「イラク、インド洋、クウェートなどに派遣された自衛官の自殺等による死者が多数に上っ
   ているらしいとの事実が判明している。
    以下、質問する。
    一 テロ対策特別措置法に基づき、インド洋における補給活動に派遣された海上自衛隊員
   の、派遣時から撤収時までの、重複を含むのべ人数を明らかにされたい。
    二 イラク対策特別措置法に基づき、イラクに派遣された自衛隊員の、派遣時から現在ま
   での、重複を含むのべ人数を明らかにされたい。
    三 インド洋における補給活動に派遣された自衛隊員、及びイラクに派遣された自衛隊員
   のうち、在職中に死亡した隊員の数、そのうち死因が自殺であった者、死因が傷病の者、死
   因が「事故または不明」の者の数を、陸海空自衛隊員毎に明らかにした上で、これらの方々
   の尊い犠牲に対する政府の見解を示されたい。
    四 自衛隊員のうち、インド洋、イラク、クウェートなどに派遣された経験者で、帰還し、
   退職した後に、精神疾患になった者や、自殺した隊員の数を、陸海空自衛隊員毎に、その数
   を明らかにした上で、元隊員、または、ご遺族に対し、政府としては、どのような形で責任
   をとるつもりなのか、見解を示されたい。」
   『質問主意書』

   『内閣衆質168第182号  平成19年11月13』
    内閣総理大臣 福田 康夫
   「一について
    我が国は、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻
   撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実
   施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成十三
   年法律第百十三号。以下「テロ対策特措法」という。)に基づき、延べ約一万九百人の海上
   自衛隊員をインド洋に派遣してきたところである。
    二について
    我が国がイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置
   法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク特措法」という。)に基づき派遣した自衛
   隊の部隊の一部については、イラクに入国していない場合があることから、お尋ねの人数に
   ついて確定的にお答えすることは困難であるが、平成十九年十一月七日現在までに、我が国
   は、イラク特措法に基づき、延べ約五千六百人の陸上自衛隊員、延べ約三百三十人の海上自
   衛隊員及び延べ約二千八百七十人の航空自衛隊員を派遣してきたところである。
    三及び四について
    テロ対策特措法又はイラク特措法に基づく派遣と隊員の死亡との関係については、一概に
   は申し上げられないが、平成十九年十月末現在で、テロ対策特措法又はイラク特措法に基づ
   き派遣された隊員のうち在職中に死亡した隊員は、陸上自衛隊が十四人、海上自衛隊が二十
   人、航空自衛隊が一人であり、そのうち、死因が自殺の者は陸上自衛隊が七人、海上自衛隊
   が八人、航空自衛隊が一人、病死の者は陸上自衛隊が一人、海上自衛隊が六人、航空自衛隊
   が零人、死因が事故又は不明の者は陸上自衛隊が六人、海上自衛隊が六人、航空自衛隊が零
   人である。
    また、防衛省として、お尋ねの「退職した後に、精神疾患になった者や、自殺した隊員の
   数」については、把握していない。」
   『答弁書』


 ◆ 『戦争する脳』
    計見 一雄
    平凡社新書(2007年)
   「今日でも使われているいくつかの心理テストがあるが、今もそれらをいくつか組み合わ
   せて、心理的特性とか性格的な特徴とかいうものを評価する道具として心理学者は使って
   いる。その組み合わせのことをテスト・バッテリーという。……
    このテスト・バッテリーというのも……(アメリカの)徴兵検査の時に心理テストを行
   なって、戦闘要員としての適性を評価するという方法が、本当に功を奏したものかどうか
   はよく知らなかった。しかしこの方法が自衛隊の隊員を募集する時に、そっくりそのまま
   日本に輸入されて、アメリカ陸軍式のテスト・バッテリーを実施していたことを私は知っ
   ている。
    ……
    しかし、これが本当に有効であったかどうなのかということになると……私はこの本を
   書くためにアメリカの陸軍軍医総監部出版の軍医の教科書“Text Book of Military
    Medicine" シリーズの“Military Psychiatry"などというものを手に入れて、読んで調
   べて見た。そうしたら、精神科医ならば腹をかかえて笑うであろうことが出てきた。」
   ≪活動報告≫ 11.10.21


 ◆ 「イラク帰還兵 心の闇とたたかう」 より
    『シリーズ米軍の危機:その2 イラク帰還兵を襲うPTSD』
    NHK・BSドキュメンタリー 2004年12月11日放送:
   「イラク帰還兵 心の闇とたたかう」


 ◆ 『米兵死者560人余・・・戦後が76%』
    朝日新聞 2004年3月17日放送:
   『米兵死者560人余・・・戦後が76%』


 ◆ 小説『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?
      ベトナム帰還兵が語る「本当の戦争」』
    アレン・ネルソン著  2003年 講談社刊
    アレン・ネルソン。ニューヨーク市生まれのアフリカ系アメリカ人です。
    ベトナム戦争に海兵隊員として参加します。

    わたしは最初の休暇のことを思い出します。
    初めてベトナムからニューヨークの実家に帰りついた。1967年のある日のことを。

    わたしは20歳の海兵隊員で、ノリのきいた軍服を着こみ、ピカピカの軍靴をはいてい
   て、ザックを肩にかけ、ブルックリンの通りを実家に向かって歩いていました。……
    家にたどり着き、そしてドアをノックしたのです。
   <続きを読む>
   ≪活動報告≫ 14.1.7


 ◆ 『自衛隊員のメンタルヘルスに関する提言』
    自衛隊員のメンタルヘルスに関する検討会 平成12年10月6日
   『自衛隊員のメンタルヘルスに関する提言』
   『自衛隊員のメンタルヘルスに関する提言の要旨』 平成12年10月6日
   『自衛隊員のメンタルヘルスに関する提言要旨』


 ◆ 『戦争における 「人殺し」 の心理学』
    デーヴ・グロスマン
    1998年6月   筑摩書房
   「何年も前から、個人としての兵士は敵を殺すことを拒否してきた。そのせいで自分の声明
   に危険が及ぶつわかっていてもである。これはなぜなのだろうか。そしてまた、これがあら
   ゆる時代に見られる現象であるとすれば、そこにはっきり気づいた人間がなぜひとりもいな
   かったのだろうか。……マーシャルは、第二次世界大戦中ずっとこの問題を研究してきた。
   敵に発砲しない何千という兵士について、先人のだれよりもよく理解したうえで、彼はこう
   結論している。『平均的かつ健全な……者でも、同胞たる人間を殺すことに対して、ふだん
   は気づかないながら内面にはやはり抵抗感を抱えているのである。その抵抗感のゆえに、義
   務を免れる道さえあれば、なんとか敵の声明を奪うのを避けようとする。……いざという瞬
   間に、[兵士は] 良心的兵役拒否者となるのである。』
   ……マーシャルはこう書いている。『平穏な防衛地区に移されると心底ほっとしたのをよく
   憶えている。……ここなら安全だからというより、これでしばらくは人を殺さなくてすむと
   思うと、じつにありがたい気持ちになるのだった』。マーシャルの表現を借りれば、第一次
   大戦の兵士の哲学は『見逃してやれ、こんどやっつけよう』 だった。
   ≪活動報告≫ 14.7.4
   ≪活動報告≫ 13.5.24


   ≪ 海 上 保 安 官 の 惨 事 ス ト レ ス ≫

 ★ 新聞記事 『海保、激務で増えるストレス
      尖閣や震災対応 休職など20年前の7倍』
    産経新聞 2013.8.4
   『海保、激務で増えるストレス 尖閣や震災対応 休職など20年前の7倍』


 ★ 『海岸救援者の外傷性ストレスにおける縦断的検討』
    堀口 真宏 京都大学大学院教育学研究科
     京都大学大学院教育学研究科紀要  No.58 (2012)
     『海岸救援者の外傷性ストレスにおける縦断的検討』
   「Herman(1992/1996)は,PTSD を抱える人の回復過程について3つの段階を挙げてい
   る。それは,「安全」「想起・哀悼」「再結合」の段階であり,まずはその人が安全な環境
   に身をおき安定化をはかることで,過去を想起し,語りを重ねていくことで,その記憶が再
   構成され,現実生活との再結合がなされると治癒に向かうと指摘している。しかし,海岸救
   援者は衝撃的な救助の後に安全な環境に置かれるというよりはむしろその「現場」に残って
   業務を続けることを強いられるともいえる。つまり、海岸救援者は Herman のいう回復過程
   に必要な「安全」な環境に身を置くことが困難な状況にあると考えられる。また Ursano ら
   (1999)は,通常と異なる状況下で救援活動した場合は,PTSD などの心理的障害の発
   生率は長期に渡って高いという報告からも,海岸救援者においても通常の業務を超える体験
   をする可能性があり,海岸救援者の心的状態について長期的な変化を検討することが必要で
   ある。」


 ★ 「災害と人権―職場における惨事ストレス対策―」
    平成23年度人権啓発指導者養成研修会 採録コラム  平成23年9月16日
    財団法人東京都医学部総合研究所副所長、心の健康プロジェクトリーダー 飛鳥井 望
   『災害と人権 ―職場における惨事ストレス対策―』
   「それから、正に活動中の戦闘体験というものがあります。今、日本の色々な組織の中では、
   海上保安庁が一番この戦闘にかかわる確率が高いということです。ちょっとした漁船に近づ
   く時も、いつどういったような戦闘行為になってしまうのかがわからないといったような状
   況があるなど、そういう緊張感を持って仕事をされております。
    ということで、この調査は2003年に実施したものですが、全国11本部の現場勤務の
   海上保安官5,300名から5分の1の系統抽出をしました。1,000名余の方に協力を
   いただきまして、有効回答率は80%です。過去10年間に強いストレスとかの事案に遭遇
   したという方が45.5%、約半数の方は過去10年間にやはり強いストレスだったといっ
   たような事案に遭遇しております。
    しかし、そのうち、実は早期に色々なストレス反応が出たという方は7割なのです。これ
   がほとんどの方に出るというのが、7割、8割。3割ぐらいの方がストレスとしては、余り
   何も感じなかったということです。ということで、やはり、ほとんどの方は何らかの早期の
   ストレスを受けているのです。
    そのうち、現在のIES─R得点が25点以上という、現在もそういうPTSD関連の色
   々な外傷性トラウマによるストレス症状が高いという方が、大体1割強くらいいます。
    つまり、7割ぐらいの方は早期にはみんなストレスは出ていますが、長い目でずっと見る
   と、その中の1割ぐらいの人がずっと尾を引くということがあります。
    それで、このようなデータに基づきまして、実際どんなストレス症状があって、どういっ
   たような早期のストレス症状があると尾を引きやすいかといったようなことを統計学的に分
   析しまして、JCG惨事ストレスチェックリストというものをつくりました。海上保安庁さ
   んの惨事ストレスチェックリスト、9項目です。
    「よく眠れない。酒の量が増えてきた。憂うつで気がめいる。涙もろくなった。イライラ
   しやすく怒りっぽい。現場の光景がくりかえし目に浮かび、感覚がぶり返す。その事件や事
   故のことは考えないようにしている。悪夢を繰り返し見る。無力感や自責の念を強く感じ
   る。」ということで、特にイライラしやすく怒りっぽいというのと、悪夢を繰り返し見ると
   いうのは、その後のメンタルヘルス上に、ほかの項目よりもっと影響していますので、配点
   を高くしております。

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