|
| |
イギリスの産業革命
R.D.レイン著『レイン わが半生』の中井久夫の解説
時代の大きな転換である産業革命は、多くの精神病者を発生させ必然的に急速な精神病院の増加
をもたらしました。
イギリスにおいてはその病因を、都市部の煤煙が精神病だけでなく、さまざまの病気の原因だと
する「ミアスマ(悪い空気)説」と強調していました。
産業革命の中で労働者が悲惨となり、精神病院が荒廃(精神病者を労働改造)した時、それに対
する批判として非医者のクェーカー教徒による広い社会基盤を持ったモラル・トリートメントが出
た。これは看護と環境を重視する先駆的なものである。最近まで英国精神病院の看護士はクェーカ
ー教徒が多かった。遅れて仏独が産業革命期にはいると、それぞれの国で精神医療改革を担ってい
たピネルとグリージンガーは、まずモラル・トリートメントを学んでいる。
労働現場における安全衛生改善運動の始まりである。労働現場における精神病者発生の原因を、
この時点で社会に求めたのです。
大気汚染に対しては、1854年8月1日から大都市汚染公害に対処する法律が発効しました。
しかし実際の根本的原因は、大気汚染ではありません。仕事のこなし方の変化、機械化のなかで
の労働者のあり方、職場内での役割分担などの人間関係の変化など、これまでの労働環境の大きな
変化への不適応性が、精神病者を増大させた原因でした。
長時間労働は女性労働者にとってはより深刻でした。骨盤の奇形、流産や難産、萎黄病(青春期
女子の貧血病)などを訴える労働者が増えていきました。
|
|