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アメリカ
「社会はそれが生んだ障害を癒す義務を負う」
ハーブ・カチンススチュワート・A・カーク著『精神患者はつくられる』(日本評論社刊)
精神の異常に関心が集まったのは、その発生が増えたためではない。合衆国が農業経済から都市
経済に移行するにつれ、社会につきまとう病気の多くが、都市生活の結果であると説明された。1
9世紀前半に起きたこの移行は、社会的逸脱の概念を大きく変質させた。異国や農村から来た新入
りの都市住民は、慣れ親しんだ農村生活との落差に変調を来し、精神の異常へと陥る危険があると
考えられた。
当時、精神の病気は社会環境によって引き起こされると考えられた。1848年にエドワード・
ジャービス(アメリカ精神医学会〔APA〕とアメリカ統計学会の創設者)は「社会が精神障害の
温床となる慣習を、確立し、助長し、許容する」と述べ、「社会はそれが生んだ障害を癒す義務を
負う」と主張した。この義務を果たすには、精神科病院を建てることが必要であった。これらの施
設は、治療が不可能な者たちの掃きだめではなく、病気の徴候を呈する人が送られる整備された施
設と考えられた。改革者たちは、もし変調の危機にある人たちが、日常生活が保証され、単純な作
業ができる早く入ることができれば、健康を取り戻すことができると考えていたのである。
1840年、政府は狂気という社会問題を解決する計画の裏づけとなる情報を得るために、第6
回合衆国10年国勢調査と同時に、連邦保安官によって各世帯について精神病者数の調査を行いま
す。
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