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軍事力、生産力の増強のため産業心理学
労働が人間に及ぼす影響の研究は、医学、生理学につづいて1910年代に産業心理学として発
展します。そこでは労働現場での基本的能力、個人差、適性、学習、訓練と単調、注意、疲労など
の問題が追及されました。
1914年第一次世界大戦がはじまります。欧米列強は長期化すると予想をしていなかったため、
軍隊の戦闘性だけでなく、軍の近代化と国民的、社会的基盤の拡大・強化、それへの国民的動員に
せまられました。軍事力、生産力の増強のため産業心理学の実践がおこなわれます。
「アメリカでは兵員選抜のための軍隊知能検査、兵員の適性配置や訓練法、将校や兵員の評定法、
戦争神経症対策としての情緒不安定性テストの開発と実践的応用の研究が推進された。
イギリスでは、軍需労働者保険委員会が中心になって工場労働の能率、事故、疾病などにたいす
る対策をめぐり、労働時間、作業環境、婦人や年少者の雇用などの労働科学的研究が広範囲に展開
された。
ドイツにおいても、将校の選抜診断法、特科兵員の適性検査や訓練法などをめぐって、研究と実
践の活動が行われた。」(岡村一成編著 『産業・組織心理学入門』)
「(アメリカでは)第一次世界大戦中に兵員の選抜方法として『軍隊テスト』(Army test)が開
発されたが、その発想は、大戦後に『心理テスト』として民間に普及し、人事選抜』『訓練』『職
業指導』のために発展的に導入されるようになった。……
その後……第二次世界大戦では軍事作業の効率を上げるために機械・用具と人間工学の関係を研
究する『人間工学(工学心理学)』が重視され、それが、大戦後の産業化・工業化の高度な進展の
なかで人間と機械がつくりだすシステムのなかでの人間的要因(ヒューマン・ファクター)の研究
に発展した。オートメーションやコンピュータの発展は、人間・機械系の研究をさらに重要なもの
にしていった」(佐々木土師二編『産業心理学への招待』)
産業心理学は戦時の「臨床実験」で発展し、平時に応用されます。
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