いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)




















  『本』の中のメンタルヘルス 軍隊・戦争




    イギリス
    臨床資格の格づけの基準設定方針は医療部門の外から
      R.D.レイン著 中村保男訳 『レイン わが半生 精神医学への道』
       (岩波書店 1986年刊)

    1951年は朝鮮戦争の時で……陸軍は、軍隊内の“戦傷者”や患者に積極果敢な治療を施す方
   針をとっていた。「最優秀の」民間治療期間で行われていた治療に劣らぬ積極的な治療の恩恵に患
   者をあずからせることによって陸軍は「その身内の世話」をしていたわけである。士官でさえ精神
   異常になることがありうるのだ。癌を恨むことができないのと同様、そういう士官を恨むわけには
   いかなかったのである。
    私の仕事の一部は、陸軍が必要としない兵士たちを精神病だという理由で陸軍から『降職』させ
   ることだった。そもそもそういう兵士たちはまず患者であるということで自動的に『降格』されて
   いた。だが、8項目から成る基準に基づいて一体どの程度までダウングレイドさせればよいのか。
    ……診断とグレイドづけは、どの患者にも並たいていでない影響を及ぼした。
    なにしろ、下は陸軍からの除隊に始まって、精神異常の認定つきで民間の精神病院へ直接移転さ
   せられ、その場合にはとおかずロボトミー手術を受けさせられる見込みがあるというケースを経て、
   何らかの経済的援助つきで「自由所帯」するという場合まで、多々あったからだ。
    私に判断できる限りでは、経済的にも社会的にも影響を及ぼすこのような臨床資格の格づけの基
   準設定に関する方針は、陸軍の医療部門の外から発していた。その実態は私には永久に分るまい。
   誰と誰を原隊に復帰させ、誰と誰を除隊させたらよいのか。ある月は十パーセントの人を復帰させ、
   九十パーセントの人を除隊させたかと思うと、翌月には十パーセントを除隊させ、九十パーセント
   を留任させた。陸軍がどの程度まで人員を切り詰めるかという決定は陸軍当局次第だったのだ。朝
   鮮戦争が進行中だった。軍事動員可能総人員徴兵、士気がさまざま問題を提起した。


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