いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)




















   こ こ ろ の ケ ア   教職員の惨事ストレス対策



    ただいまと 聞きたい声が 聞こえない


    自分の家族は無事だった。だが、級友には母を亡くした子もいる。父を亡くした子もい
   る。5月、友達の心中に思いをはせて詠もうかと考えた。本当のつらさを経験していない
   私に書けるのか。迷ううちに50分が過ぎた。
    先生は言った。「家で書いてきてもいいよ。明日、提出して」。
    帰宅後、外で働く母が帰ってくる光景を思い浮かべて、書き上げた。朝の何げない「行
   ってきます」を聞いたのが、最後になるなんて。
    仕上げた後、また迷った。この句を提出したら、先生を余計に苦しめるのか。先生も震
   災で娘を亡くしていた。でも、この悲しみを日本中のみんなに伝えたい。もう二度と繰り
   返してほしくないから。翌日、提出した。
    先生は今もこの句をそらんじている。

             小野智美編 『女川一中生の句 あの日から』 (はとり文庫)
             ≪活動報告≫ 12.10.26


     入学式の 返事の中に低い声

        遺影を抱いた母親の声

                         2011.5.16 朝日歌壇


  2011年3月22日
  宮城県気仙沼市立階上中学校卒業式

     卒業生代表の答辞

   本日は未曾有の大震災の傷も癒え
  ない最中、私たちのために卒業式を
  挙行していただきありがとうござい
  ます。
   ちょうど10日前の3月12日。
  春を思わせる暖かな日でした。私た
  ちはそのキラキラ光る日差しの中を
  希望に胸を膨らませ、通いなれたこ
  の学舎を57名揃って巣立つはずで
  した。
   前日の11日、一足早く渡された
  思い出のたくさん詰まったアルバム
  を開き、10数時間後の卒業式に思
  いを馳せた友もいたことでしょう。
  「東日本大震災」と名づけられる天
  変地異が起こるとも知らずに。
   階上中学校といえば「防災教育」
  といわれ、内外から高く評価され、
  十分な訓練もしていた私たちでし
  た。
   しかし自然の猛威の前には人間の
  力はあまりにも無力で、私たちから
  大切なものを容赦なく奪っていきま
  した。天が与えた試練というにはむ
  ごすぎるものでした。つらくて、悔
  しくてたまりません。
   時計の針は14時46分を指した
  ままです。でも時は確実に流れてい
  ます。
   生かされた者として顔を上げ、常
  に思いやりの心を持ち、強く、正し
  く、たくましく生きていかなければ
  なりません。
   命の重さを知るには 大きすぎる
  代償でした。
   しかし、苦境にあっても天を恨ま
  ず、運命に耐え、助け合って生きて
  いくことがこれからの私たちの使命
  です。
   私たちは今それぞれの新しい人生
  の一歩を踏み出します。どこにいて
  も、何をしていようとも、この地で
  仲間と共有した時を忘れず、宝物と
  して生きていきます。
   後輩の皆さん。階上中学校で過ご
  す「あたりまえ」に思える日々や友
  だちがいかに貴重なものかを考え、
  いとおしんで過ごしてください。
   先生方、親身のご指導ありがとう
  ございました。先生方がいかに私た
  ちを思ってくださっていたか、今に
  なってよく分かります。
   地域の皆さん、これまで様々なご
  支援をいただきありがとうございま
  した。これからもよろしくお願いい
  たします。
   お父さん、お母さん、家族の皆さ
  ん、これから私たちが歩んでいく姿
  を見守っていてください。必ずよき
  社会人になります。
   私は、この階上中学校の生徒でい
  られたことを誇りに思います。
   最後に、本当に、本当に、ありが
  とうございました。

     平成23年3月22日

     ≪活動報告≫ 14.9.17

 ★ 新聞記事 『<検証学びや>被災地の教職員 募るストレス』
   河北新報 16.2.20
   「<検証学びや>被災地の教職員 募るストレス」
   「東日本大震災では教職員も平時と異なる対応が求められ、心身の健康を悪化させる例が多
   かった。文部科学省の調査によると、岩手、宮城、福島3県と仙台市の公立小中高校教職員
   の病気休職(病休)数は全体として減少傾向にあるが、精神疾患は高止まり状態だ。
    精神疾患の割合は高まっており、2014年度は岩手が69.6%、宮城が68.9%と過
   去4年で最も高くなった。福島も59.4%でこの3年で最高。仙台市は76.9%で、総数
   がほぼ同じ11年度の約2倍となった。
    宮城県教委が11年度から隔年で公立小中高校全教職員を対象に実施した健康調査でも、
   精神健康が最も悪い「要注意」とされた割合は昨年6月の第3回調査で4.8%と最高にな
   った。」


 ★ 新聞記事 『震災以降悪化…教職員の心身不調やや改善』
   河北新報 15.11.24
   「震災以降悪化…教職員の心身不調やや改善」
   ≪活動報告≫15.12.11
   「東日本大震災以降、悪化傾向が確認された教職員の心身の健康が改善しつつあることが、
   宮城県教委がことし6月に実施した調査で分かった。一方で、……
    精神面の健康評価で、セルフケアで対応可能な「心配ない」「注意が必要」の教職員は前
   回より3.4ポイント多い87.5%。専門機関のケアが必要な「かなり注意が必要」は6.
   0%、「要注意」は4.8%で、ともに前回とほぼ同じ割合だった。仕事への意欲が低下す
   るバーンアウト(燃え尽き)も、「心配ない」「注意が必要」が73.8%と4.6ポイント
   増えた。これに対し「要注意」は16.7%で、前回とほぼ変化がなかった。」


 ★ 『こどもの“いのち”を守り抜くために 東日本大震災を心に刻む
     ~学校で何があったのか 語りたい、残したい、
        伝えたいこと~』第3集
   宮城県教職員組合 発行 14.9
   「この3年を振り返ると、1年目は、誰もが無我夢中に走り続けた時期でした。宮城県教職
   員組合が、2011年9月に実施した教職員健康調査によると、教職員の3割が『抑うつ状
   態』という結果が明らかになりました。『眠れない』『食欲がない』『瓦礫を見るのがつら
   い』といった声が相次いだのです。
    2年目になると。身体的な症状が具体的に現れ始めました。『夕方になると声が出なくな
   る』『耳が聞こえにくくなった』という症状です。『被災した校舎を見ると涙が止まらなく
   なる』といったメンタル面の事例も数多く報告されるようになりました。
    3年目はどうか。『実は遺体安置所になった体育館で遺族との面会に立ち会う業務をして
   いました』『たくさんの遺体を見たんです』など、これまで心に封印してきた“あの日”の
   凄惨な光景を吐露する教職員が増えました。
    先日『○○先生、今春、早期退職するんだって』という話を相次いで聞きました。定年を
   数年後に控えた被災校の教職員です。震災後の蓄積したストレスから心身ともに疲弊し、結
   果、早期退職を決断せざるを得なかったのでしょう。残念でなりません。
    ……
    『先生たち、交代で休もう』これは阪神淡路大震災を経験した西宮市の小川嘉憲先生の言
   葉です。小川先生の講座を震災から3カ月後に沿岸部の3カ所で開催しました。子どもの荒
   れ・不登校や教職員の『うつ』が震災後3年目にピークを迎えたこと、行政への加配要求な
   どが大切であることなどを学びました」
   ≪活動報告≫14.11.11


 ★ 新聞記事 『教職員「燃え尽き」22.7%
      震災対応、多忙化 宮城』
   河北新報 13.11.14
   「教職員『燃え尽き』22.7%」
 ★ 新聞記事 『東日本大震災 :教職員健康調査 4人に1人、
     精神的な負担 沿岸部で影響濃く/宮城』
   毎日新聞 13.11.14
   「東日本大震災 :教職員健康調査 4人に1人、精神的な負担 沿岸部で影響濃く/宮城」
   ≪活動報告≫13.11.19


 ★ 特集 『被災地教職員・自治体職員の震災後ストレスと心のケア』
  ・「被災地の公務員労働者が抱える震災後ストレス
    香山リカ  精神科医・立教大学教授
  ・被災地の実態から考える子どもと教職員の心のケア
    向明戸 静子 日教組執行委員
    向明戸さんは、東日本大震災が発生した時は岩手県で勤務していました。
   「心配なのは、つらさやかなしみを内に閉じ込めてしまうことで、きもちがパンクしてしま
   わないだろうかということ。バーンアウトが心配されます。……
    では、今の被災地教職員に必要なケアはどういうものでしょうか。話して楽になる、とい
   う体験はだれしもあると思います。まずは、自分1人で抱え込んでいたものを、同じ被災体
   験をした者同士で、つらさや悲しさを一緒に分かち合うことです。このような同じ体験、同
   じ境遇の人同士で、お互いの話を聞き合うことを『ピアカウンセリング』と言いますが、自
   分の気持ちを理解してくれる相手だからこそ、話せることがあります。ピアカウンセリング
   であれば、自分自身の気持ち、今の精神状態と向き合うことができるのではないかと思いま
   す。
    子どもの心のケアと同様に、この人なら話しても安心という相手が、大人のケアにも必要
   です。」

   福島の現場はいま
  ・「そんなに頑張らなくてもいい」ということに気付いてほしい
    菊池 ゆかり  福島教職員組合女性部長
   「子どものメンタルヘルスの研修会はあるけれども、教職員のメンタルケアは行われていま
   せん。スクールカウンセラーも入っているけれど、子どものケアは、日常的に見ている人が
   その変化に気づいて、『どうしたの?』と声をかけるのがケアであって、来週の何曜日にカ
   ウンセラーの先生が来るから、その日に相談しましょうというのは、意味がないような気が
   します。また、スクールカウンセラーの先生に対して、今回はこの子です、というようなこ
   とも教職員が調査しなければならず、業務が増えているという現状もあります。」

  ・支援する人へのケアを考える
    富永 良喜  兵庫教育大学大学院教授
   雑誌 『女も男も』 2013年春・夏号  発行 労働教育センター
   ≪活動報告≫13.7.18


 ★ 『東日本大震災 教職員が語る子ども・いのち・未来』
   宮城県教職員組合【編】
   明石書店・刊
    あの日、宮城の教職員はどんな事態に直面し、何を考え、どう行動したのか。身を
   挺して子どもたちを守り避難誘導した学級担任、子どもや地域住民のケアに献身した
   養護教員、学校再開の事務に奔走した学校事務職員や学校給食の再開に奮闘した栄養
   職員、そして犠牲となった教職員の遺族・友人などの生の声が、大震災が学校教育現
   場にもたらした全体像を明らかにする。
  目 次
第1章 子どもたちとあの日(東日本大震災大津波の記録 ; 3月11
     日 津波から避難 ほか)
第2章 あの時・あの日から願う(地域の復興なくして学校の再生なし
     ;学校と地域がつながることの大切さ ほか)
第3章 あの日から子どもたちとともに(学校再建への中学生の思い
     ;東日本大震災と子どもたち ほか)
第4章 子どもたちの未来のために語り継ぐ(東日本大震災の実態 ;
     忘れないあの日のこと ほか)


 ★ 河北新報 13.1.27
   「宮城県教職員時間外勤務 18%が月80時間超 昨年10月」
   「教職員時間外勤務」
   ≪活動報告≫13.2.13


 ★ 『災害支援・教育復興にむけて つなぐ』
   日教組災害対策本部
   『つなぐ』


 ★ パンフレット 『こどもが 安心できる 毎日のために』
   徳島県教育委員会 24.3
   『こどもが 安心できる 毎日のために』
   「休憩をとることは決して『自分勝手』なことではありません。災害後の子どもへの支援は
   長期にわたります。短期集中でエネルギーを放出し、枯渇してしまわないようにしてくださ
   い。
    また、教職員が休むことは、『先生も自分と同じ』と子どもが安心するきっかけとなるこ
   ともあります。大規模災害で全く休める状態ではないと思える場合は、学外者や支援の対象
   者がいない、教職員のための休憩スペースなどを準備するといいでしょう。また外部からの
   支援者が校内にいる場合は、遠慮なく連携し、一人で抱え込まないようにしましょう。」


 ★ 特集 震災と組合・職場のケア
  『勤労者のメンタルヘルスの実態と職場の対応』
    日本生産性本部 メンタル・ヘルス研究所 今井 保次 飯田進一郎
  『被災自治体職員に対するメンタルケア
    激務のなかでのメンタルダウンを防げ』
    自治労総合企画総務局長 西田 一美
  『震災後の岩教組青年部の取り組み』
    ―集まろう 話そう みんなの笑顔をとりもどそう―
    岩手県教職員組合 青年部長 佐藤  浩
   「釜石支部は今回の震災で大きな被害を受けました。そんな中ですが、4月の下旬に釜石支
   部の青年部で集まることができました。生徒を失った悲しみや、家族を探して歩く時の辛さ
   や、被災した側ではなくて被災した方を支える立場としての考えや、遺体安置所となってい
   る場で学校を始める不安や、それぞれの抱える不安を話すことができました。話したことで
   すぐに解決というわけにはいかないですが、話して今の状況を分かち合ったことで心の居場
   所があること知り、安心感をもつことができました。
    集まって話すことが大切だと感じたので、青年部での取り組みでもこれからも「集まる 
   話す つながる」を大切に活動していきたいなと思います。いろいろな活動がある中でもJ
   OIN-USや青年部の素晴らしい活動があるので、今年度もぜひ開催して話す場、つなが
   る場、集まる場をつくっていってほしいし、盛り上げていきたいなと思っています。これか
   らもがんばりましょう。」
    この討論から、集まれる仲間で集まり、徐々に集まれる仲間を増やしていき、みんなで支
   え合いながら震災を乗り越えていこうという思いを確認することができました。
    そして、従来通りの取り組みを行うこととなりました。
   『連合総研レポート』 2012年2月号
   『連合総研レポート』
   ≪活動報告≫12.2.24


 ★ 新聞記事 『気仙沼・震災当日休暇、津波で死亡
      教諭の公務災害認定』
     河北新報 12.1.16
     『気仙沼・震災当日休暇、津波で死亡 教諭の公務災害認定』


 ★ 新聞記事 『震災でストレス 教職員3割うつ
      宮教組・小中学校調査』
     河北新報 11.11.29
     『震災でストレス 教職員3割うつ 宮教組・小中学校調査』
     ≪活動報告≫ 12.7.6
     ≪活動報告≫ 11.12.9


 ★ 新聞記事 『心のケア まず先生から』
   朝日新聞 11.5.1
   『心のケア まず先生から』
   宮教組速報 『先生たち 交代で休もう』
   「多くの先生たちは、避難所の運営や学校再建に忙殺され、自宅や学校も被災して、児童生
   徒のケアに全力をつぎ込めない無力感に駆られている。『こういう時こそ「できないことは
   できない」と自分の心に言い聞かせることが大事。完璧じゃなくていい。
    「中途半端にやる力」が、長い目で見たらとても大切』……『イライラや落ち込みを隠し
   て子供たちに接しようとするのは難しい。無理に前向きになる必要もない。子どもにとって
   は先生がいてくれるだけで治療的な意味があるのです』」


 ★ 新聞記事 『心に傷負う子供も 接する教員も』
   毎日新聞 11.4.30
   『心に傷負う子供も 接する教員も』
   「研修では講義だけでなく、心身をリラックスさせる『実技』にも時間を割いた。『子供を
   元気づけるには先生が元気でいることが大切』(県教委)だからだ。県教委によると、同県
   沿岸部の公立小中高校の教職員約2500人のうち約2割が、家屋に被害を受けた被災者で
   もある。
    (臨床心理士の)佐々木さんの指導で、両腕を上に伸ばしたり、肩を上下させたり、座っ
   た状態で足を伸ばしたりするたびに『あー』『はー』と気持ちの良さそうな声がもれ、それ
   まで緊張感や疲労感が漂っていた教員の顔に初めて笑みが浮かんだ。
    『笑っちゃいけないと思っている人がいるかもしれないが、それは間違い。力を抜く時に
   抜かないと力を入れる時に入れられない』。佐々木さんはリラクセーションの大切さを説く。
   阪神大震災の時、感情を素直に出し『泣き虫先生』と呼ばれた教員のクラスではストレスの
   回復が早かったという。」


 ★ 『災害発生時に学校が置かれた状況とそれに伴う教師の心理』
    小林朋子 静岡大学教育学部学校教育講座
    『静岡大学教育学部研究報告(人文・社会・自然科学篇)』 第61号(2011.3)
   『災害発生時に学校が置かれた状況とそれに伴う教師の心理』
   「(2) 教師を支える校内体制
    ……教師の家族の状況、避難生活の状況、自宅などの被災状況など、教師個人がかかえる
   ストレス状態は大きく異なる。その状況において教師を支えたものの一つとして本研究であ
   げられたのは、<管理職の理解><教師同士のサポート>であった。しかし、宮崎ら(19
   96)の調査では、地震発生後2ヶ月ほどの間で、上司との関係にストレスを感じた教師は
   約81%、同僚との人間関係においては約78%と、他の人間関係や自分の被災状況と比べ
   ても突出して高い割合になっている。また消防職員や警察官を対象とした調査では、消防職
   員の約9%、警察官の約46%がつらい気持ちを和らげるものとして、「職員みんなで話を
   する、何でも話せる職場」をあげており、何でも話せる職場の雰囲気や語らいの場は重要な
   意味を持つ(餅原、2006)。」


 ★ 『教職員のメンタルヘルス調査 報告』
    兵庫県精神保健協会 こころのケアセンター [主任研究者:岩井圭司 (医師)]
    兵庫県精神保健協会こころのケアセンター 1998年3月
   『災害発生時に学校が置かれた状況とそれに伴う教師の心理』
   「震災から本調査の実施時点まで2年2ヶ月の時間が経過していたが、調査時点でなお、震
   災時に深刻な被害を受けた者・震災後過酷な業務に従事した者で精神健康の低下が見られた。
   女性は男性に比して強いストレスをこうむっていた。被災地に勤務する者の10~20%で
   PTSDが強く疑われた。また、被災していない者も、一般人口に比してかなり高度なスト
   レス状況にあった。」


 ★ 『阪神・淡路大震災と学校 -教育現場からの発信-』
    「阪神・淡路大震災と学校」編集委員会
    発行所 兵庫県教職員組合 1995年11月10日
    内容紹介
    被災地域の学校や子どもの状況、避難所運営への教職員の関わり、学校再開にむけた教職
   員の尽力、被災地校への支援活動を掲載。制度の弾力的運用、当時発出された要請書、行政
   からの通知文なども資料として掲載。教育復興のあり方を提言。
   『教育現場からの発信』

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