労働安全衛生 安 全 衛 生 法 律 ・ 通 達 ・ 資 料
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ゆったり働こうキャンペーン
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行政の進める労働安全衛生モデルは軍隊
精神科医の島悟医師が雑誌の座談会で次のように語っています。
「行政の進める労働安全衛生のモデルは軍隊なんですね。産業保健スタッフで言えば、産
業医は軍医、衛生管理者は衛生兵です。『場の管理』が基本なんです。それぞれの現場で
使っている有機溶剤や薬剤など危険物の種類の違いなどに対応するために『場を管理する』
という発想。実際のオフィスワークの場合はどこでも同じですよね」
「場を管理する」とは具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
「ジェノサイド(大量殺戮)の恐ろしさは、一時に大量の人間が殺戮されることにあるの
ではない。『そのなかに、ひとりひとりの死がないということが、私にはおそろしいのだ。
人間が被害においてついに自立できず、ただ集団であるにすぎないときは、その死におい
ても自立することなく、集団のままであるだろう。死においてただ数であるとき、それは
絶望そのものである。』(石原吉郎著『望郷と海』ちくま学芸文庫)」
「総力戦としての戦争は、民衆が戦争に総動員され、その生命が危険に晒され奪われると
いうばかりでなく、人々をまさに『数』や『モノ』や『原子的存在』へと貶める極限状況
を生み出した。」(三谷孝編『戦争と民衆 戦争体験を問い直す』旬報社刊)
「場を管理する」政策は、画一的対応・管理をし、労働者を集団としか見ません。
現在の競争社会においては会社も労働者を「数」や「モノ」や「原子的存在」としか見
ていません。
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「疲れた」と
言えるうちはまだよくて
(つかれた)を
ただ抱えて眠る
2018・7・29 朝日歌壇
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◇「使用者の環境整備義務」◇
労働安全衛生法」は3条1項で
「事業者は、単にこの法律で定める労働災害
の防止のための最低基準を守るだけでなく、
快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通
じて職場における労働者の安全と健康を確保
するようにしなければならない」
と使用者の責務を謳っています。
また、第71条の2(使用者の講ずる措置)
として
「事業者は、事業場における安全衛生の向上
を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に
講ずることにより、快適な職場環境を形成す
るように努めなければならない。
① 作業環境を快適な常態に維持管理するた
めの措置
② 労働者の従事する作業について、その方
法を改善するための措置
③ 作業に従事することによる労働者の疲労
を回復するための施設又は設備の設置又は
整備
④ 第3号に掲げるもののほか、快適な職場
環境を形成するため必要な措置」
と使用者の「就業環境整備義務」を謳ってい
ます。
◇「使用者の安全配慮義務」◇
「安全配慮義務」は、裁判判例の積み重ね
の中から定着した法理です。
「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の
報酬支払いをその基本内容とする双務有償契
約であるが、通常の場合、労働者は、使用者
の指定した場所に配置され、使用者の供給す
る設備、器具等を用いて労務の提供を行うも
のであるから、使用者は、右の報酬支払い義
務にとどまらず、労働者が労務提供のため設
置する場所、設備もしくは器具等を使用し又
は使用者の指示のもとに労務を提供する過程
において、労働者の生命及び身体等を危険か
ら保護するよう配慮すべき義務(以下「安全
配慮義務」という)を負っているものと解す
るのが相当である。」(川義事件 最高裁昭
59.4.10判決)
「安全配慮義務」の法理は、2008年3
月1日から施行された「労働契約法」の第5
条(労働者の安全への配慮)「使用者は、労
働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の
安全を確保しつつ労働することができるよう、
必要な配慮をするものとする。」に引き継が
れました。
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判例 東芝深谷工場
解雇無効確認等請求事件
労働者が自らの精神的健康に関
する一定の情報を使用者に申告し
なかったことをもって過失相殺を
することができない
「上告人が被上告人に申告しなかった自らの精
神的健康(いわゆるメンタルヘルス)に関する
情報は,神経科の医院への通院,その診断に係
る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内
容とするもので,労働者にとって,自己のプラ
イバシーに属する情報であり,人事考課等に影
響し得る事柄として通常は職場において知られ
ることなく就労を継続しようとすることが想定
される性質の情報であったといえる。使用者は,
必ずしも労働者からの申告がなくても,その健
康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき
安全配慮義務を負っているところ,上記のよう
に労働者にとって過重な業務が続く中でその体
調の悪化が看取される場合には,上記のような
情報については労働者本人からの積極的な申告
が期待し難いことを前提とした上で,必要に応
じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健
康への配慮に努める必要があるものというべき
である。」(最高裁第二小法廷2014年3月
24日)
判決文
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・「第13次労働災害防止計画」
平成30年2月 厚生労働省
「ウ 職場におけるメンタルヘルス対策等の推進
(ア)メンタルヘルス不調の予防
・ストレスチェック制度について、高ストレスで、かつ医師による面接指導が必要とされ
た者を適切に医師の面接指導につなげるなど、メンタルヘルス不調を未然に防止するため
の取組を推進するとともに、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善に
ついて、好事例の収集・情報提供等の支援を行い、その取組を推進することで、事業場に
おける総合的なメンタルヘルス対策の取組を推進する。
・ 産業保健総合支援センターによる支援等により、小規模事業場におけるストレスチェ
ック制度の普及を含めたメンタルヘルス対策の取組を推進する。
・ 事業場におけるメンタルヘルス対策について、労働者の心の健康の保持増進のための
指針(平成18年健康保持増進のための指針公示第3号)に基づく取組を引き続き推進す
るとともに、特に、事業場外資源を含めた相談窓口の設置を推進することにより、労働者
が安心してメンタルヘルス等の相談を受 けられる環境を整備する。」
ストレスチェック制度は果たして有効なのでしょうか。メンタルヘルスケアにおいては二
次予が優先されると体調不良は「自己責任」になってしまいます。
「第13次労働災害防止計画」
「第12次労働災害防止計画」
≪活動報告≫ 2018.4.3
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・「第12次労働災害防止計画(平成25年度~29年度)」
平成25年2月25日 厚生労働省
「イ 重点とする健康確保・職業性疾病対策
(現状と課題)
・健康面では、労災認定件数が増加している精神障害を防止するためのメンタルヘルス対
策や、労災認定件数が減少していない脳・心臓疾患を防止するための過重労働対策に対し
て引き続き重点的取組が必要である。
メンタルヘルス不調者を増やさないためには、労働者自身によるセルフケアをはじめ、
管理監督者や産業保健スタッフによるケアなどにより、メンタルヘルス不調者の早期発見
・早期治療を進めるとともに、メンタルヘルス丌調になりにくい職場環境に改善していく
ことが必要である。」
この手順は一次予防がおろそかになり二次予防中心になります。
「第12次労働災害防止計画」
「第13次労働災害防止計画」
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・「今後の職場における安全衛生対策について(建議)」
(平成22年12月22日 労審発1222第597号)
「今後の職場における安全衛生対策につい(建議)」
この中の「4 職場におけるメンタルヘルス対策の推進」の、「新たな枠組」がこの後、
ストレスチェック法に繋がっていきます。
≪活動報告≫ 2011.3.30
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≪通 達≫
・「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」
平成27年11月30日 厚労省
改正 平成27年11月30日 公示第6号 (昭和63年9月1日 公示第1号)
「2 メンタルヘルスケアの基本的考え方
ストレスの原因となる要因(以下「ストレス要因」という。)は、仕事、職業生活、家
庭、地域等に存在している。心の健康づくりは、労働者自身が、ストレスに気づき、これ
に対処すること(セルフケア)の必要性を認識することが重要である。
しかし、職場に存在するストレス要因は、労働者自身の力だけでは取り除くことができ
ないものもあることから、労働者の心の健康づくりを推進していくためには、職場環境の
改善も含め、事業者によるメンタルヘルスケアの積極的推進が重要であり、労働の場にお
ける組織的かつ計画的な対策の実施は、大きな役割を果たすものである。」
「職場における心の健康づくり」
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
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・労働者の健康を守るために 過重労働による健康障害防止対策
厚労省
平成23年2月16日改正 (平成18年3月17日)
「事業場トップの過重労働対策に対する方針は、過重労働を防止する企業風土をつくるこ
とを目標としましょう。方針の決定には、労働者の意見を聴くことと、社内的な合意形成
が重要となります。
方針を決定したら、文書等により全労働者に周知徹底します。人事労務部門や産業保健
部門が勤務状況などを検討した上で、方針を役員会議などで決定した事業場の事例では、
過重労働対策が効果的に運用されている実績があります。」
「過重労働による健康障害防止対策」
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≪労働安全衛生対策資料≫
・「平成23年 労働安全衛生特別調査
(労働災害防止対策等重点調査)」(新設)の概況
厚労省 平成24年10月25日
「2 長時間労働者への医師による面接指導等に関する事項
(1)時間外・休日労働の状況
過去1か月間(平成23年10月1日から同年10月31日までの期間。以下同じ。)
における時間外・休日労働(※4)(複数回答)について、「1か月あたり100時間
を超える労働者がいた」事業所の割合は7.6%[22年調査6.0%]、「1か月あた
り80時間を超え、100時間以下の労働者がいた」事業所の割合は9.8%[同調査
10.0%]、「1か月あたり45時間を超え、80時間以下の労働者がいた」事業所
の割合は28.4%[同調査28.2%]となっている(第6表)。 ………
3 メンタルヘルスケアに関する事項
(1)メンタルヘルス不調により休業・退職した労働者の状況
過去1年間(平成22年11月1日から平成23年10月31日までの期間。以下同
じ。)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業
所の割合は9.0%[22年調査7.3%]となっている。そのうち、職場復帰した労働
者がいる事業所の割合は53.8%となっている。…
(5)職場復帰支援の内容
メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所について、職場復帰支援(複数回答)の
内容をみると、「職場配置、人事異動」が51.4%と最も多く、次いで「短時間勤務」
(37.4%)、「治療上必要な時間の確保」(36.5%)となっている。」
「平成23年 労働安全衛生特別調査」
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・パンフレット 『職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査』
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 2012年
『職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査』
≪活動報告≫ 2012.5.22
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・『メンタルヘルス対策に関する研究
-対策事例・欧米の状況・文献レビュー・調査結果-』
『調査研究報告書No.144』 01.9 労働政策研修・研修機構
「メンタルヘルス対策に関する研究」
「3. 若者向け公的相談機関:仕事、職場の悩み、ストレスの相談が増加
近年の経済環境悪化のため、能力・スキルがあってもリストラの対象になるケースが増加
している。これに伴い、来談者の年齢層も中高年が増加する傾向にある。勤務先からの「戦
力外通告」と受け取れることを言われ来所するケースもあり、スキルアップとともに自信や
信頼感の回復にも務めている。。一方で、20代後半の若年層の相談も減少していない。採
用時に即戦力として求められることが多い一方、広い意味での能力開発の機会が減少してい
る。このため職場での些細なトラブルでも、対処できないケースが増加している。上司との
軋轢に悩む若者の相談も多い。企業の業績悪化にともなうマイナスの連鎖でストレスが生成
され、メンタルヘルスを損なっていると考えられる。」
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