いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)




















  職場のいじめ  男 女 雇 用 機 会 均 等

  厚労省
 ハラスメント対策 マニュアル
   ハラスメント対策 マニュアル


『職場環境配慮義務』

 福岡セクシャル・ハラスメント裁判
      判 決 文
 (1992年4月16日 福岡地裁)

 「使用者は、被用者との関係にお
 いて社会通念上伴う義務として、
 被用者が労務に服する過程で生命
 及び健康を害しないよう職場環境
 等につき配慮すべき注意義務を負
 うが、そのほかにも、労務遂行に
 関連して被用者の人格的尊厳を侵
 しその労務提供に重大な支障を来
 す事由が発生することを防ぎ、又
 はそれに適切に対処して、職場が
 被用者にとって働きやすい環境を
 保つよう配慮する注意義務もある
 と解されるところ、被用者を選任
 監督する立場にある者が右注意義
 務を怠った場合には、右の立場に
 ある者は被用者に対する不法行為
 が成立することがあり、使用者も
 民法715条により不法行為責任
 を負うことがあると解すべきであ
 る。」

 「判決は、セクシャル・ハラスメントは労
 働者の人格的尊厳を侵し、労働提供に重大
 な支障を来すものであると認定し、使用者
 にはこれを防止する義務と、起きた時には
 適切に対処して、労働者にとって職場が働
 きやすい環境を保つよう配慮する注意義務
 があるとした。」
 「セクシャル・ハラスメントを発生させる
 根源にあるものは何か、労働者が人格をそ
 こなわれずに働くということの中味はどう
 いうことなのか、このことを問わずに、表
 面的に職場環境整備として管理を強化し、
 セクシャル・ハラスメント「対策」で事足
 れりとして終わらせてはなるまい。」(職
 場での性的嫌がらせと闘う裁判を支援する
 会編『職場の「常識」が変わる』インパク
 ト出版会)



 ◆ 新聞記事「育休から復帰直前に解雇「無効」
     高裁判決、マタハラ認定
    朝日新聞 21.3.5
   「『出産したらもどって来るからね』――。園児たちにそう約束した保育士が、育
   休からの復職直前、園側に解雇された。東京高裁は4日の控訴審判決で、妊娠や出
   産による職場での嫌がらせ『マタニティーハラスメント』と認め、保育士の解雇は
   無効と判断した。
    神奈川県の30代女性は、2017年4月から産休に入り、同年5月に出産。1
   8年から復職を希望したが『園長と保育観が一致しない』と解雇されたという。
    男女雇用機会均等法9条4項は、『原則として妊娠中や産後1年たたない労働者
   への解雇は無効』と規定するが、事業主が解雇理由を妊娠や出産でないと証明でき
   た際は例外とする。
    後藤博裁判長(石井浩裁判長代読)はこの日の判決で、園長に批判的な言動をし
   たことが解雇理由とされた点について、『意見は述べたが解雇に相当する問題行動
   とはいえない』と判断。一審・東京地裁判決に続き、解雇は均等法9条4項に反す
   るとした。
    さらに、この規定が目指す趣旨についても言及。『妊娠や出産で身体的・精神的
   な負荷が想定されることから、安心して出産・育児ができるようにするための規定』
   とした。
    判決後に都内で会見した女性は『同じ思いをする人がいなくなってほしい』と訴
   えた。今も、この園での復職を望んでいるという。
    保育園側は『コメントできない』とした。」
    

 ◆ 本『プロブレムQ&A 労働安全衛生とハラスメント』
     贄川由美子・千葉茂・飯田勝泰・著  緑風出版 2020年
   「一九九二年の某組合女性集会の資料にセクシュアル・ハラスメントのアンケート
   結果が掲載されています。
    同年七月女性対象に配布され九月初頭までに職場ごとに密封回収の上、集計され
   ました。回収枚数三三三枚(在職者に対する回収率六四%)とアンケートとしては
   高率の回収率でした。「働くことと性差三別を考える三多摩の会」が行った一万人
   アンケートを土台に、六九項目の設問(〇×でセクハラ項目の体験有無を答える)
   と自由記入(もっとも不快だったこと)欄が設けてありました。他に年代と既婚の
   有無も設問しています。
    アンケートには、まだセクシュアル・ハラスメントの理解が職場で進んでいない
   中で、この回答をする中でその内容(「あっ、この嫌な思いもセクシュアル・ハラ
   スメントというものなんだ!」)に気付いてもらいたいという意図がありました。
    ・・・
    おそらくはこの職場だけでなく、どの職場でも蔓延していた状況であったと思わ
   れます。
   『自由記入欄は、組合アンケートでは無記入が多いのが通常ですが、まだまだセク
   シュアル・ハラスメントが市民権を得ていない中で、批判的な意見(「こんなこと
   で騒いでいては満足な仕事ができない」、「何の調査がしたくてのアンケートか判
   らず、辞退します」)もありましたが、具体的な不快な経験が多数寄せられ、働く
   環境として本当に改善していってほしいと思う女性が多数いたことは、集計する側
   が驚いたくらいだということです。


 ◆ セクハラは、性差別、人格権侵害、そして生存権が奪われる
    19年5月23日、参議院厚生労働委員会での「女性の職業生活における活躍の
   推進等の法律」改正案の審議にさいして5人の参考人が意見を述べました。
    角田由紀子弁護士の意見です。
    私は、ほぼ30年近くセクシュアルハラスメントの被害者の側に立って仕事をし
   てまいりました。そこで、セクシュアルハラスメント被害者への司法的救済という
   のは本当に機能しているのかというこの論点に絞ってお話をさせていただきます。
    1989年、1人の若い女性が職場での語りにくい女性差別をなくそうと、初め
   てセクシュアルハラスメントを理由として不法行為による損害賠償請求事件を福岡
   地裁に提訴しました。・・・
    この第一号事件は、92年に不法行為であると認定されて、原告のほぼ全面勝訴
   で終わりました。私たちは、アメリカでのセクシュアルハラスメント事件の扱いに
   見習ったのですが、日本にはアメリカと違って職場の性差別禁止法がありません。
   そこで、私たちはやむなく、せめて違法行為として損害賠償をされるべきと考えて、
   当時、今もですが、使えそうな法律を含めてたった1つあった民法の不法行為を使
   いました。
    判決では、直接の行為者である編集長に加えて、原告と編集長が勤めている会社
   の不法行為責任が明確に認められました。
    原告は、それが不法行為であり慰謝料の支払責任があるということを認定しても
   らうためには、性差別であるということを強調することが必要だと考えましたので、
   次のように主張しました。いわゆるセクシュアルハラスメントは、職場で行われる
   相手方の意思に反する性的な言動であって、労働環境に悪い影響を与えるような行
   為をいう、それは相手方、とりわけ女性を性によって差別し、性的自己決定の自由
   等のプライバシーを含む人格権を侵害するものであり、また働く権利を侵害し、ひ
   いては生存権を脅かすものであって、憲法十三条、十四条、民法一条二等に違反す
   る。このような性差別が許されないことは諸外国においても既に広く認識されてお
   り、さらに、女性差別撤廃条約、男女雇用機会均等法、労働基準法等々によりセク
   シュアルハラスメントを受けずに働く権利は法律で保障されているんだと。
    つまり、性差別であって、自己決定権を含む人格権侵害であり、その結果、労働
   する権利が奪われ、挙げ句には生存権が奪われると、こういう三段階にわたる違法
   行為であることがセクシュアルハラスメントの特徴であります。
   ≪活動報告≫ 19.6.21


 ◆ 『男女雇用機会均等法第30条に基づく公表について
     ~初めての公表事案、妊娠を理由とする解雇~
    雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課  27年9月4日
    『男女雇用機会均等法第30条に基づく公表について』
   「男女雇用機会均等法(以下「法」という)第30条において、法第29条第1項
   に基づく厚生労働大臣による勧告に従わない場合、その旨を公表できる制度が設け
   られていますが、このほど、初の事案が生じましたので、下記のとおり公表しま
   す。」
    男女雇用機会均等法第9条第3項の禁止事項のほかに(参考資料)として「男女
   雇用機会均等法違反事案の指導の流れ」などのパンフレットも載っています。


 ◆ ワンコイン講座
   「パワーハラスメントとは何か? パワハラが提起するもの」
     金子 雅臣(職場のハラスメント研究所所長) 14.5.28
   「私は以前、職場におけるすべての女性差別の問題はセクハラであると言い切りま
   した。性的な意図を持っていなければセクハラではないと言われていたのですがそ
   うではない、いずれすべての性差別はセクハラとなると言ってきました。
    『くそばばあ』とかの言葉の問題は性的な目的を持って言ったわけではなくても
   今はセクハラと通用するようになりました。
    パワハラも同じです。すべての労働問題はパワハラだと言ってもいいと思います。
   職場で発生した問題を原因に近いところから捉え返し、パワハラを労働問題として
   訴えていくことになるだろうと言い続けています。
    解雇は究極のパワハラです。賃金不払いや配置転換や出向は嫌がらせであったら
   明らかにパワハラです。
    そうするとパワハラというキーワードでもう1回労働問題全体を問い直す必要が
   あります。パワハラという概念がないとなかなか主張しずらいのですが、賃金不払
   いの原因は何なのか、結果から原因を問い直すうような闘い方が必要です。」
    「パワーハラスメントとは何か? パワハラが提起するもの」



 ◆ 判決『賃金が同じ勤続年数の女性正社員の8割以下は
      公序良俗に違反』
    丸子警報器賃金差別事件 長野地裁上田支部判決
    1993年10月20日、女性臨時社員28名は、同じ仕事に従事する正社員と
   の賃金差別が不法行為に当たるとして、女性正社員との賃金格差相当の損害賠償金
   と慰謝料の支払いを求めて長野地裁上田支部に提訴しました。
    96年3月15日に判決が出ました。
   「およそ人はその労働に対して等しく報われなければならないという均等待遇の理
   念が存在し、これは人格の価値を平等と見る市民法の普遍的な原理と考える」と判
   示し、「一定年以上勤務した臨時社員には正社員となる途を用意するか、正社員に
   準じた年功序列制の賃金体系を設ける必要があった。……2か月ごとの雇用期間の
   更新を形式的に繰り返すことにより、女性正社員との顕著な賃金格差を維持拡大し
   つつ長期間の雇用を継続したことは、前記均等待遇の理念に違反する差別であり、
   単に妥当性を欠くというにとどまらず公序良俗違反として違法となる」「賃金が、
   同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となるとき、その限度において被告の裁量が
   公序良俗に違反し違法となると判断する」

    会社判決を不服として3月21日高裁に告訴しましたが、99年11月29日東
   京高裁で労働者の全面勝利という形で和解が成立し、全面解決を実現しました。


 ◆ 「男女雇用機会均等法」
    アメリカからの構造改革要求を受けると正規労働者は長時間労働と過重労働が強
   いられ、女性労働者が働きにくい労働環境が作られていきます。男性正規労働者を
   基軸にとらえる雇用関係が確立し、はじき出された労働者は男性も含めて非正規労
   働者となり増加の一途を辿りました。85年はそれを追認する労働法制の改訂が進
   められた。
    79年国連は女性差別撤廃条約を採択。日本では85年5月17日、男女差別禁
   止事項を盛り込んだ「男女雇用機会均等法」が成立します。そして女子の時間外労
   働、休日労働が一部解除になりました。実態は、女性労働者は「男性労働者と均等
   のチャンス」を保証されたのではなく、「『男の戦場』に均等に『出兵』させられ
   た」。一部のキャリアと呼ばれる女性労働者だけが成功を収めた。しかしその条件
   である高学歴取得は、親の収入に裏付けられたものでした。
    その一方、サービス残業できない女性労働者は査定の対象からもはずされた。賃
   金だけでなく、「コース別」、雇用契約形態間による格差や分断が進みます。
    このような方向性は女性労働者の就労を困難にしただけでなく、男性正規労働者
   の労働条件を悪化させていきました。
    97年6月11日、男女雇用均等法と労働基準法が改正されます。均等法では男
   女差別禁止の強化がはかられたが、引き換えに女性労働者に対する時間外労働、休
   日労働、深夜労働の規制などが撤廃されました。
    規制緩和のなかで労働者は勝ち抜くことを強制され、そのなかで身体と生活が破
   壊されていきました。先に振り落とされたのが、長時間労働や転勤ができない女性
   労働者でした。再就職における雇用契約は非正規雇用と低賃金でした。このような
   中で性差は、雇用格差、社内福祉制度からの排除、賃金格差と生活困窮、教育格差
   のスパイラルを描いていきます。再就職に向けての教育・訓練の機会も奪われる。
   しかし振り落とされた者の敗者復活は「自己責任」です。
    現在全労働者に占める非正規労働者数は40%近く、女性労働者だけでは60%
   に及んでいます。
    ≪活動報告≫ 14.10.16


 ◆ 『日本民衆の歴史 占領と民衆運動』
    藤原彰 編(三省堂刊 1975年刊)
    厚生省の報告によれば、戦後から10月上旬まで2か月間に徴用者を含めて41
   3万人(うち女子75万人)の労働者が解雇され、これは復員軍人761万人、海
   外引揚者150万人を加えると、失業者数は1324万人にのぼると推計された。
   解雇者のなかでもっとも悲惨なのは、徴用の女子労働者であった。9月20日付の
   『読売報知』は、「働く女性は何処へ行く」と題し、「戦争終結直後の女子有業者
   人口は1367万に達し、戦力増強の重要産業たる鉱業・工業・交通産業関係だけ
   でも313万を数えたのであった。……目下厚生省では男子復員を円滑に行うため、
   ……学徒や挺身隊以外に役181万人の女子の家庭復帰を目論んでいる模様である
   が、果たして簡単にいくのかどうか」として、つぎのように報じている。


 ◆ 男女同一労働同一賃金
    イギリスで家に閉じ込められていた女性は戦時中の労働力不足を補うため男性に
   代っさまざまな分野に進出。男性と同じように働けることを「証明」しました。戦
   後は帰還した男性に職場を奪われることになっても、男女同一労働同一賃金を要求
   する契機になっていきます。

    第一次世界大戦を経た1918年にベルサイユ講和会議で国際連盟の創設が提唱
   されます。
    1919年1月25日、ベルサイユ講和会議は「国際的立場から労働条件を調査
   し、及び国際連盟と協力しかつその指示の下に右の調査及び考慮を係属すべき常設
   機構の形式を勧告する」と国際労働法制委員会設置を決議します。
    35回の委員会を経て、労働者の代表を交えた労働問題に対応する国際労働機関
   (ILO)の創設と「国際労働規約」に盛り込む社会正義のための「一般原則」を
   決定。その第一は「締結国は現に労働が単なる商品と見なさるべきものに非ずと認
   めるが故に労働条件を規律する方法及原則にして……」と「労働非商品」をうたい
   ました。さらに団結権の保障、最低賃金制、1日8時間・週48時間、毎週1回の
   休日、年少労働禁止、男女同一労働同一賃金、移民の自由、労働保護監督制度の9
   原則をうたい6月28日、ILOが創設されました。
    ≪活動報告≫ 15.5.15

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