■ 『跳ね返りとトラウマ そばにいるあなたも無傷ではない』
カミーユ・エマニュエル著・吉田良子訳 柏書房 20223年
「『跳ね返り』とは『ある加害行為により損害を受けた直接被害者と身近な関係にある者が
被る影響や被害』 です。
精神科医はいいます。『苦悩を変化させるには」『感情を表現する場を作りださなければ
ならない。“なにごともなかったような”社会復帰は傷を深める。“しかし、苦悩を描いた
り上演したり、物語や立ち向かう主張にできるなら、変容はすみやかにおこなわれる』
著者は感情を表現する方法を書くことに設定します。そして体験を書くことでレジリエン
ス(トラウマを乗り越え、不都合な環境(逆境)のなかで自らを構築し続けていく能力)を
獲得します。
そのためには“寄り添う人たち”が必要でした。
悲惨な出来事は、どんなものであってもすべてが、他者との関係を制御不能としてしまい
ます。現実の生活で身近な誰かが悲劇に見舞われたとき、そこにいてもいいのかを、どこに
いればいいのかを、誰も教わっていません。だから、あるときはやり過ぎ、あるときは足り
なさすぎ、あるときには足りず、あるときは早すぎ、あるときは遅すぎます。嫌な思いをさ
せるのが怖い、言葉を見つけられない。
友達がいいます。『自分の世界がひっくりかえってしまったみたいに思えるときには、変
わらない友だちがいてくれることも必要なの』」
≪活動報告≫ 23.2.14
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■ 『心のレジリエンス』
「The Asahi Shimbun GLOBE 」1月3日 朝日新聞社
「人は不条理といえる悲しみにどう向き合い、再生していこうとしているのか。悲嘆
にくれ、喪失感を抱えながらも、前を向いて生きていく。そんなレジリエンス(復元
力)を探して。」 ・・・
「電話ボックスの周りには草花や木々が茂り、傷ついた人の心を癒す。(風の電話を
計画した)佐々木は『悲嘆を抱えると五感が鈍る。大事なのは感じること。亡くなっ
た人は見えない、声も聞こえない。でも電話の向こうに感じることができる。亡くな
ってもつながれる。それが生きる希望になり心の再生力になる』という。
風の電話でさまざまな人と接し、佐々木はこう考えるようになった。『人の心には
自然治癒力がある。なぜ自分は悲しんでいるのか、電話ボックスで自問自答する。言
葉にすることで心の欠けた部分を埋め、自分で自分をケアしている。人はそれぞれの
物語を生きている。大切な人を失うことで途切れてしまった物語を、風の電話で自分
自身と向き合い、新たにつむぎ直してほしい』」
≪活動報告≫ 21.1.26
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■ 『大事故遺族の悲哀の研究 喪の途上にて』
野田正彰著 岩波書店
「『心が傷つく』とは、どういうことだろうか。柔らかい人の心は、耐えがたい体験
によって三つの問題を抱える、ひとつは言葉どおり、心をある実態としてイメージし
て、ショックや繰り返される不快な体験によって『精神的外傷』を被るのである。だ
が、心は精神的外傷がふさがれた後、身体のようにちょっとした瘢痕を残して、元ど
おり機能していくわけにはいかない。必ず精神的外傷をきっかけに、以前とは違った
態勢に入っていく。
まず人は精神的外傷の後、その傷を過剰に包み隠そうとする。あるいは、崩れた精
神的バランスを取り戻そうとして、過剰に身構えてしまう。心に加えられた外からの
力(精神的暴力)と丁度同等の力で反発し、不幸な体験を静かに押し戻すことは非常
に難しい。右手に重い鞄を持って歩く人の右肩は、左肩より上ることはあっても下る
ことはない。同じく心は、精神的外傷からあまりにも多くのことを学びすぎ、緊張し、
身構えてしまう。自分の心の傷を周囲の人に気付かれないように、他人に同情ないし
後ろ指を指されないように、隙を見せないように努め、さらには不幸を越えて、より
強靭に生きていこうとする。それは挫折か、再生かを賭けた戦いであるが故に、多く
の人は再び立ち直りつつ、精神的外傷を過剰に代償してしまう。克服した困難な体験、
悲しい体験は、その人に自信を与えると共に、その人なりの精神的防衛の仕方を固定
し、絶対化させることになる。心の強さは常にかたくなさの影が伴い、それは弱さで
もある。
≪活動報告≫ 16.4.22
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■ 『憎むのでもなく、許すのでもなく』
ボリス・シリュルニク著 吉田書店 2014.3刊
ナチスから逃れた6歳の少年は、トラウマをはねのけて長い戦後を生き延びた。凍っ
た言葉が溶け出す―― (帯 から)
「私に許しを求めた者は、誰もいなかった。例外は、自分たの祖父母が犯した罪につ
いて、いまだに罪悪感を覚えるドイツの若者たちである。
……
ナチズムや人種差別に加担した人々は、現実から切り離された表象に服従した。彼
らは、自分たちが考えたイメージを他者に押し付け、それに対して怒ったのだ。たと
えば、社会の寄生虫のような輩、黒人、ユダヤ人、アラブ人、オーベルニュ地方の人、
ジャズ好きには死を、と叫んだのだ。そして彼らは、そうした不況理な表象に従うた
めに行動した。彼らは服従することによって団結し、団結することによって自分たち
は強者だという感覚に浸った。すなわち、「われわれが服従するおかげで、われわれ
の崇拝するリーダーは強いのだ」と考えたのだ。
私にとっての選択肢は、罰するか、許すかではなく、ほんの少し自由になるために
理解するか、隷属に幸福を見出すために服従するかである。憎むのは、過去の囚人で
あり続けることだ。憎しみから抜け出すためには、許すよりも理解する方がよいでは
ないか。≪活動報告≫ 15.5.8
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■ 『震災後のグリーフケア』
早稲田大学教育・総合科学学術院教授 本田恵子
『ShinSho』 No.79 早稲田大学学生部
「震災でつらいのは、『大切な人や家が同じ場所にはない』という事実とともに、そ
れらにつながる思いが止まってしまうこと。心がバランスを崩したときに何が起こる、
のかを理解し支援の方法を考えよう。」
『震災後のグリーフケア』
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■ 「東日本大震災と殉職」
兵庫県こころのケアセンター副センター長 加藤 寛
公益財団法人 ひょうご震災記念21世紀研究機構 HATコラム
「東日本大震災が阪神・淡路大震災と大きく異なる点の一つは、殉職者の多さである。
発生時刻が平日の昼間の時間帯であり、地震から津波襲来までの時間に、防災マニュ
アルどおりに防潮堤や水門を閉めたり、住民の避難誘導や情報収集などにあたったり
した多くの人たちが亡くなった。消防隊員・消防団員262名、警察官25名、自衛
官2名のほかにも、役場の職員、教職員、医療機関や介護施設の職員などを含めると、
数百人の尊い命が奪われた。」
『東日本大震災と殉職』
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■ 『災害 支援者ガイド ~体と心のケア』
災害 支援者ガイド 12.7.16
「心理的ダメージの構造
○「被害」や「心の傷」と一口に言っても、実際にはいろいろな要素を含んでおり、
症状や対処法が少し違ってきます。心の健康におよぼす影響は、複数の視点で検
討する必要があります。
①喪失(大切な人や家を失う)と関係性
②トラウマ(恐怖体験)
③現実のストレス(環境の変化)
④元々の課題(発生前からの課題など)
『災害 支援者ガイド』
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■ 『災害遺族への悲嘆ケアとは?』
朝日新聞 12.2.24
『災害遺族への悲嘆ケアとは?』
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■ 『Compassion コンパッション』
2011.12 Vol.6
コンパッションとはその語源から「苦しみと共に」という意味です。
最愛の人を亡くして苦しむ人と共にあること、それはGCCのミッションと考え
ます。
目次
東日本大震災特別寄稿
震災後のメンタルヘルスケア
智田文徳医師からのメッセージ
「いわてから」 その他
『Compassion コンパッション災害遺族への悲嘆ケアとは?』
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■ 21世紀文明研究セミナー2011
人と防災未来センター(2011.12.21 )
『災害における喪失と悲嘆へのグリーフケア』
神戸赤十字病院心療内科 村上典子
災害における グリーフケアのポイント
1.悲嘆の反応は個人差がある
*家族の中でも違いがある。
*こうあるべきという正しい反応はない。
2.遺族の 「語り」 の尊重
*まず 「共感をもって傾聴する」 ことが第一歩
*遺族が自身の語りを通じて、「心におちる」所、いわば「ある種の納得を得る」こと
が大事。
3.「抑圧された悲嘆」 に注意する
*人はあまりに大きな心の傷を受けた場合、自身の心を守るために心にふたをする
ことがある。
*遺族が悲嘆をおしこめたり、回避している時は、無理に感情表出を促そうとしな
い。
4.「治す」 というより 「寄り添う」 こと
*黙ってそばにいるだけで十分な場合もある。
5.遺族のニーズに合わせる
*時には経済的支援や生活援助など、現実的・社会的サポートが精神的ケアより必要な
時がある。
*ひとりよがりや自己満足に陥らないように。
6.ケアする側 (ケアギバー) の限界を知る
*遺族からネガティブな感情を向けられるリスクに心の準備が必要。
*ケアギバーの2次的受傷にも注意。
*必要な場合は専門家へつなげる
『災害における喪失と悲嘆へのグリーフケア』
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■ パンフレット 『大震災後の悲嘆ケア(グリーフケア) 』
被災者の心の状態と、そのケアの留意事項
上智大学グリーフケア研究所 発行 2011年5月
「『あわれみ』は有害な場合も多い
『かわいそうに』といったあわれみの態度や話し方で接しないようにしましょう。
それは相手の自尊心を傷つけることになります。また憐れみは、相手が不可避な現実
としっかり向き合っていこうとする努力の妨げになることさえあります。」
≪活動報告≫ 11.7.4
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■ 新聞記事 『東日本大震災:遺族支える 「悲嘆ケア」』
毎日新聞 2011年4月16日
『東日本大震災:遺族支える 「悲嘆ケア」』
「巽さんより5歳ほど年上の男性は、津波で母と妻を失った。ひつぎの中には数珠な
どが置かれた遺体袋が一つ。巽さんが袋を少し開けると捜し続けた顔がそこにあった。
「ありがとうございます」。男性は短く言って頭を下げた。
妻の着ていた冷たい服を手に、顔を見つめる男性のかけた眼鏡があふれる涙でくも
り始めていく。そばに立つ巽さんは、のどまで出かかる慰めの言葉をのみ込んだ。訓
練で学んだ言葉が頭に浮かぶ。「安易な声かけに傷つく人もいる。遺族のペースを最
優先に。あくまで寄り添うことが大切だ」。発見された場所や状況、死因。遺族の疑
問に正確に、分かりやすく答える。犠牲者の最期を知り、尊厳を持って見送ることは、
遺族のケアの第一歩になるからだ。」
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■ 『震災トラウマと復興ストレス』
宮地 尚子著
岩波ブックレット (2011年)
「この本は、被災地の方々向けてというよりも、外部から支援やボランティアに携わる人た
ち、復興構想や政策に関わる人たち、遠くにいて何もできないけれど、被災者に寄り添って、
深くものごとを考えたいと思っている人たちに向けて書いています。もちろん被災者の方々
にとっても意味あるものにしたいと思っています。(はじめに より)
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■ 『遺体が救援者に引き起こす気持ちの変化』
重村 淳(防衛医科大学校 精神科学講座 /精神科
日本トラウマティック・ストレス学会
『遺体が救援者に引き起こす気持ちの変化』
「【基本的な心構え】
業務の目標を忘れないで下さい。 そして、それを見失わようにして下さい。
業務前に「心の準備」をすることは簡単ではありません。そために、業務内容何が求めら
れているのか、可能な限り事前に知ことが大切です。また同じよう経験をした同僚から話を
聞くことも大切です。
休憩をこまめにとり、衛生を保ち、食事と水分をしっか摂って下さい。
業務外の時間では、心身ともに休ん下さい。」
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■ [実践報告] 『災害急性期からの遺族支援』
―遺体安置所でのDMORT活動から―
村上典子 神戸赤十字病院心療内科 他
『トラウマティック・ストレス』 2011.2号
「DMORT(Disaster Mortuary Operational Response Team 災害時遺族・遺体対応派遣
チーム)とは、米国におけるDMAT(Disaster Medical Assistance Team 災害時医療支援
チーム)の特殊チームとして災害直後から活動する専門家ボランティア。
……遺体の身元確認や修復、遺族への連絡とグリーフケアを行っている……」
2005年4月のJR福知山線脱線事故の時に遺族からだされたメッセージ「亡くなると
遺体はものになってしまうのかもしれないが、家族(遺族)の存在を忘れないでほしい」
「負傷者は回復していくが、遺族はそのまま、むしろ悪くなっていく」「初期対応によっ
て少しでも遺族は救われる」「現場に遺族の心のケアに配慮してくれる人もいてほしい」を
受け止めて活動は開始されました。
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■ 『愛する人を亡くした時』
アール・A・グロルマン 著
春秋社
「死別の悲しみを癒すための10の指針」
1、どのような感情もすべて受け入れよう。
2、感情を外に出そう。
3、悲しみが一夜にして癒えるなどとは思わないように。
4、わが子とともに悲しみを癒そう。
5、孤独の世界へ逃げ込むのは、悲しみを癒す間違った方法。
6、友人は大切な存在。
7、自助グループの力を借りて、自分や他の人を助けよう。
8、カウンセリングを受けることも悲しみを癒すのに役立つ。
9、自分を大切に。
10、愛する人との死別という苦しい体験を意味ある体験に変えるように努力しよ
う。
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■ 『すばらしい悲しみ』 ―グリーフが癒される10の段階―
グレンジャー・E・ウェストバーグ 著
地曳網出版(2007年)
グリーフ(Grief)とは「深い悲しみ」の意味です。著者は、深い悲しみが癒される
には10段階のプロセスがあるといいます。
グリーフケアの古典です。
『素晴らしい悲しみ』
≪活動報告≫ 11.4.18
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