いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)




















  『本』の中のメンタルヘルス 日本




    『不平等社会日本』
     佐藤俊樹著『不平等社会日本』(中央公論新社)

    1955年から10年ごとに、全国の20歳から69歳の人を対象に職業キャリア、学歴、社会
   的地位、両親の職業や学歴などのデータを集める「社会階層と社会移動の全国調査」(略称SSM
   調査)がおこなわれています。
    1995年の調査結果を分析・研究しています。その中の、地位や経済的な豊かさを得るための
   『資源配分』における実績と努力などに関してです。学歴は関係ないということではないと結論づ
   けています。

    戦後の日本では『努力すればナントカなる』部分が拡大し、『努力してもしかたがない』部分が
   縮小したとのべたが、それはW雇上(ホワイトカラー雇用上層)の拡大・全自営の縮小に典型的に
   現れているともいえそうだ。
    しかし、実績主義の人々は本当に自分の力だけでやってきたのか。彼らは「努力すればナントカ
   なる」世界に生きているのだろうか。
    痛烈な反論が、1つは、女性の側からあがるはずである。――スタート地点が平等だなんてとん
   でもない。女性が専門職・管理職になるにはさまざま壁がある。逆にいえば、実績主義の三分の二
   を占める男性の地位は、『性別』という障壁に守られた、虚構の『実績』なのだ、と。再反論もあ
   るだろうが、男性の実績主義者の社会的地位を手放しで実力だといいがたいのは、先に述べたとお
   りである。W雇上の収入の「年功序列」にみられるように、むしろどこか既得権の匂いがする。
    実績主義の人々の「実績」をささえているのは、この、性別という、目に見える壁だけではない。
   実はもう1つ、目に見えない大きな壁があるのである。
    ……
    実はこの学歴社会批判、日本の学歴社会、学歴―昇進の選抜システムをささえている重要な装置
   の一つだからである。その意味では、偏差値批判や学歴批判派ほとんど『お決まり』の話になって
   いる。
    ……
    実績主義には高い学歴の人間が多く、W(ホワイトカラー)雇用など、高い学歴を活かす職業に
   ついている。それだけではない。実践主義の人々は、……その父親の学歴も高いのである。彼らの
   高い学歴は父親の高い学歴をひきついだものなのだ。……P・ブルデューという社会学者の言葉を
   借りれば、実績主義の人々も別の資産の『相続者』なのである。
    ……
    選抜システムは、どういうものであれ、必ず重大な問題を一つかかえる。選抜は少数の『勝者』
   と多数の『敗者』をつくりだす。『敗者』とされた人々は、そのままだと、当然やる気をうしなう。
   その結果、経済的な活力が大きく殺がれ、社会全体も不安定になる。『努力してもしかたがない』
   という疑惑にとりつかれていれば、その危険はいっそう高まる。
    選抜社会をうまく運営していくためには、『敗者』とされた人々が、意欲と希望と社会への信頼
   をうしなわないようにしなければならない。……そこには敗者を『再加熱』するしくみが欠かせな
   い。

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