大きな社会変動は、精神疾患を急増させた
小俣和一郎著『精神病院の起源 近代篇』(太田出版 2000年)
東京に設置された最初の精神病院は上野に設置されていた救貧的病院施設「養育院」に付設され
れました。それが1897年に独立、東京府癲狂院となり、その後86年に巣鴨に移転、さらに1
919年世田谷上北沢に移転します。現在の都立松沢病院です。
1900年、最初の精神病院に関する法律「精神病者監獄法」が発布されます。その第1条に
「精神病者ハ其ノ後見人配偶者又ハ四親等内ノ親族ニ於テ之ヲ監督スルノ義務ヲ負フ」としそれが
不可能の時だけ収容が可能とされました。また第9条では「公私立精神病院及公私立病院ノ精神病
室ハ行政丁ニ許可ヲ受クルニ非サレハ之ヲ使用スルコトヲ得ス」とあるようにすべて警察の管轄下
に置かれました。
法制定がヨーロッパ各国と比べると半世紀以上遅れ、さらに疾病が医療ではなく治安の対象とさ
れた予断・偏見が現在にまで弊害をもたらしています。
新たな法律が作られたのは1950年「精神衛生法」で、やっと私宅監置制度は非合法化されま
した。
大きな社会変動は、同時に多数の不適応者を生み出し、体調不良者・精神疾患を急増させます。
「日本で最初の精神医学教室教授となった東大の榊叔は……明治初期に地方ばかりではなく東京
をはじめとする都会においても、「狐憑き」のような迷信に係る病態例が急増したことを指摘して
いる」
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