∇特集 深夜労働の実態と法的規制のあり方
労働法律旬報 2011.4.10
・深夜業の実態の変化と法規制の重要課題
吉田美喜夫
・医師の深夜労働の実態と問題点
池田 寛
・看護師の深夜労働の実態
中野千香子
・パイロットの深夜勤務
長澤 利一
・郵便内務勤労働者の深夜労働の実態と労働時間規制
廣岡 元穂
「新夜勤」は、「16時間勤務」や「新夜勤」には存在した
“いのち綱”ともいえる特例休息が廃止され、仮眠時間もなく、
実労10時間、拘束11時間勤務(夜10時から翌朝9時まで)
を昼夜逆転で4日間繰り返す勤務である。……
日本郵政株式会社の異常な深夜勤務における病気休暇者の推
移をみると、とくに深夜勤導入後の2004年以降、毎年83
0人、985人、1068人、1085人(公社、各年7月1
日現在休職者の者、毎年11月人事院へ報告)とうなぎ登りの
上昇となっている。これはいかに深夜勤の導入が健康に著しい
影響を与えていることがわかる。
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∇夜勤交代勤務の何が悪い? どうすればいい?
労働科学研究所 慢性疲労研究グループ 松元 俊
「労働と医学」 No.113 2012
夜間に働くということはどういうことを意味するのか。体温
は24時間のリズムがあって、人は夜になったら体温が低くな
り、眠気が生じて眠るという生理をもっているわけです。夜勤
はそれに反して、ちょうど眠くなるところで、本来なら睡眠に
適したタイミングで、その規制のために断固とした方針が打ち
出されていないだけでまさしく働かなければいけないのです。
また人間は夜勤に完全には適応できないということは、過去の
研究から明らかになっています。
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∇特集 夜勤・交代勤務
「労働の科学」2001年12月号
・深夜業の労使ガイドラインと今後の課題
中桐 伸五
最近の夜勤交代制改善の国際動向としては、夜業に関するI
LO条約・勧告(1990年)、労働時間の設定に関するEU
指令(93/104/EC)(1903年)、オランダにおける
労働時間および休憩に関する法改正(1996年)などが注目
すべき動きとしてあげられる。
ILOとEUの動きの特徴は、夜勤交代制改善のための総合
基準を打ち出した店である。総合基準としては、少なくても1
1時間の勤務間隔時間の確保、残業の回避、深夜に不適時の配
置転換、妊娠時の配慮、社会的なサービスを供与する制度、勤
務計画作成への労働者参加、労働者自身が要求した場合の無料
健康評価の提供、1日平均8時間(有害労働の場合1日上限8
時間)・1週上限48時間労働(EU)、1日6時間以上の労
働では休憩の確保(EU)、1年間に4週間の有給休暇(EU)
などがあげられる。
・鉄鋼産業労使による深夜業に関する自主的
ガイドライン
幸野 直道
・化学工業労使による深夜業に関する自主的
ガイドライン
大脇良夫・鈴木且己
・電器産業における交替・変則勤務に関する
深夜業に関する自主的ガイドライン
内田 勝久
・自動車関連製造業の労使による深夜業に関する
自主的ガイドライン
木村 勝
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◇ 論 説 ◇
深夜交替制労働の現状と法規制の課題
吉田 美喜夫 立命館法学 一九九六年四号
たとえば二〇三名の過労死事例の調査の結果、深夜勤務従事
者が六二例を占めていたという報告にも見られるように、深夜
労働ないし深夜交替制労働が過労死の有力な原因になっている
にもかかわらず、その規制のために断固とした方針が打ち出さ
れていないだけでなく、むしろ逆に、女子の深夜業禁止の撤廃
が「規制緩和」の一環として議論されている状況である。
たしかに、企業間競争が激化しているという事情の下で、操
業時間を維持ないし延長しようとする要請と労働時間の短縮と
いう要請とを両立させるためには、交替制を採用する必要もあ
ろう。・・・
しかし、交替制が容認できるからといって、深夜時間帯も含
む交替制を同列に論ずることはできない。後述のように、深夜
交替制労働は大きな弊害を伴うからである。このことは一般に
知られている事実であるにもかかわらず、深夜交替制労働に対
して従来一般的な法規制が行われて来なかっただけでなく、八
〇年代半ば以降の労働時間法制の改正の際にも規制は加えられ
なかった。
しかし、最近の「24時間型社会」の進展の下では、今以上
に深夜交替制労働が労働者一般の問題となる可能性があるだけ
でなく、第三次産業では、不規則で昼間労働と異なる労働の質
・量の交替制が普及する可能性もある。
「深夜交替制労働の現状と法規制の課題」
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