いじめ・メンタルヘルス労働者支援センター(IMC)

 労 働 災 害

  精 神 障 害 労 災   過 労 死 ・ 過 労 自 殺   公 務 災 害
  長 時 間 労 働 問 題   職 場 の 暴 力   裁 判 判 例 等


        『筑豊塵肺訴訟記念碑』

   2004年4月29日、最高裁判所がわが国で初めて職業病に対
  する国の賠償責任を認めた日である。
   原告たち炭鉱労働者は、戦中戦後の日本経済を筑豊の地底から支
  えてきた。
   その筑豊の炭鉱を国は、スクラップ・アンド・スクラップ政策に
  よって一挙に閉山に追い込んだ。
   炭鉱を追われた原告たち炭鉱労働者を待っていたのは、不治の病
  『じん肺』であった。繰り返すセキとタン、動悸息切れ、呼吸困難
  の発作、そしてじん肺死であった。

      “俺たちはボタじゃない”

   1985年12月26日、原告たち炭鉱労働者は、企業だけでな
  く国に対して、筑豊じん肺訴訟を提起した。
   炭鉱の安全管理を指導する国は、企業の石炭政策を優先し、原告
  たち炭鉱労働者がじん肺にかからないための施策を怠ってきた。
   永い裁判闘争が続き、原告たち炭坑労働者が次々に志半ばにして
  命を奪われていった。
   原告たち炭鉱労働者とその妻たちは、街頭に立って支援を呼びか
  け、多くの労働者、市民と結束してじん肺被害の償いとじん肺の根
  絶を求め続けた。
   筑豊じん肺訴訟の18年4ヶ月は、炭鉱労働者とその妻たちがじ
  ん肺被害の償いとじん肺根絶のために誇りをかけて挑んだ闘いであ
  る。
   筑豊じん肺訴訟の最高裁判所判決はすべての労働者・すべての市
  民のための救済の羅針盤となった。
   これは、“俺たちはボタじゃない”と結束して闘った原告たち炭
  鉱労働者とその妻たちの勝利の証である。

             筑豊じん肺訴訟記念碑建立実行委員会
                  実行委員長 大野隆司
          1985.12.26 ~ 2004.4.27

   『筑豊塵肺訴訟記念碑』は田川市の石炭記念公園に建立されました。
   1985.12.26~2004.4..7は裁判に費やされた年月です。
   ≪活動報告≫ 13.3.1







     労 働 災 害 と は

   労働災害には業務災害と通勤災害があり
  ます。
   業務災害とは、労働者が労働契約に基づ
  く業務が原因で負傷や罹患したり、障害が
  残ったり、あるいは死亡することをいいま
  す。
   このような場合は、労災保険で療養や補
  償が行われます。
   業務災害にあたるかどうかは、労働契約
  に基づく業務に従事していたという「業務
  遂行性」、労働契約に基づく業務を原因と
  して発症した「業務起因性」のいずれかの
  要因を満たしていなければなりません。




    労災補償保険制度の比較法的研究
     ―ドイツ・フランス・アメリカ・イギリス法の
      現状からみた日本法の位置と課題
         労働政策研究報告書 No.205  20.9.15

    研究の目的
   「働き方改革実行計画」(2017年3月)においては、雇
   用型テレワーク、非雇用型テレワーク(雇用契約によらない
   働き方)、兼業・副業といった「柔軟な働き方がしやすい環
   境整備」が、柱の一つとして掲げられており、これらの働き
   方にかかる労災補償保険制度による保護の在り方は、現在な
   いし今後の我が国における重要な政策課題の一つとなってい
   る。このような動向を背景に、本研究は、ドイツ・フランス
   ・アメリカ・イギリスにおける労災補償保険法制の現状を詳
   細にフォローしつつ、日本との比較検討を行うことにより、
   同制度をめぐる日本法の国際的な位置と今後の検討課題と明
   らかにすることを目的とするものである。
   「労働政策研究報告書 No.205」



    労働者災害補償制度の現状と課題
      国立国会図書館調査及び立法考査局
       専門調査員社会労働調査室主任堀部貢
      レファレンス 790号 2016. 11

    要 旨
   ③ 労働災害の発生は全体として減少傾向にあり、その多く
   は事故による負傷等であるが、近年、長時間労働等に起因す
   る過労死等が多発している。特に、脳・心臓疾患や精神障害
   については、従来から業務上の認定に係る問題が生じており、
   認定基準の緩和等による労災認定の改善が行われている。

   1 労働者災害補償
   (1)労働基準法
    我が国における労働者災害補償(以下「労災補償」とい
   う。)は、戦前においては、いくつかの個別の法律により時
   間をかけて制度が整えられてきたが、戦前の制度は、適用さ
   れる労働者の範囲が狭いなど十分な内容ではなかったとされ
   ている。
    終戦後、新しい時代に対応する労働者保護のための法律と
   して、昭和22年に、労働条件の最低基準などを定める労働
   基準法が新たに制定された。同法は、第8章に「災害補償」
   の規定が設けられ、労働災害に対する使用者の補償義務が課
   されることになった。そして、同法により戦前の諸制度が統
   一されるとともに、災害補償の適用対象の拡大や補償水準の
   大幅な引上げが行われることになった。また、業務上の災害
   に対する使用者の無過失賠償責任の理念が確立されることに
   なる画期的なものであった。
   「労働者災害補償制度の現状と課題」



       ◆ ◇職 業 病◇ ◆
    ◆ ◇ (Occupational diseases) ◇ ◆
      ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説
      (2013年4月30日付第133号)

    職業性疾病または職業病とは、業務に起因する危険因子に
   暴露した結果として罹患する疾病を指します。個人レベルで
   ある疾病に業務起因性があるか否かを確定するには、その人
   が職場で特定の危険有害因子に暴露したこととその疾病の間
   に因果関係が存在することを確立することが求められます。
   ……
    職業病は仕事の世界に多大な苦難と損失をもたらしていま
   す。職業病または業務関連疾病で命を落としている人の数は、
   毎年、労働に係わる事故による死亡者の6倍に達しているに
   もかかわらず、その姿はあまり目立っていません。職業病の
   性質も急速に変化しており、科学技術や社会の変化に加え、
   世界経済の情勢によって、従来の健康危害の状況は悪化し、
   新たな危害が生まれてきています。じん肺のような、よく知
   られている職業病が依然として広く見られる一方で、精神障
   害や筋骨格系障害のような新しい職業病も増えてきています。

   「職 業 病」

        深 夜 労 働

    ◇「ルーテンフランツ原則」◇

    1988年に西ドイツのルーテンフランツは夜勤の悪影響
   を予防する9原則・「ルーテンフランツ原則」を提唱し、世
   界的な対策基準となっています。

   1.夜勤は連続3晩まで
   2.夜勤と日勤の交代時刻は早朝を避ける
   3.勤務交代時刻は弾力化を
   4.夜勤の勤務時間は短めに
   5.次の勤務まで10時間以上あける
   6.少なくとも週末を含む2連休をとる
   7.日勤→夜勤より、日勤→夕勤の循環がよい
   8.勤務が一巡する周期を長くしない
   9.夜勤、休日など勤務の配置はなるべく規則的に
    ≪活動報告≫ 16.12.2


      ◆ ◇ 夜業 ◇ ◆
    ◆ ◇ (Night work) ◇ ◆
    ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説
    (2011年9月30日付第112号)

   交代制労働の中でも夜間勤務(夜業)は生理的調整、睡眠、
  安寧を最も乱すと一般に認識されています。労働者の夜業に対
  する耐性は、その年齢、経済状態、家庭事情、そして当然、職
  務の性質に大いに左右されるものの、定期的な夜業は多くの様
  々な形で労働者の健康に影響を与える可能性があることが一般
  に認められています。体内時計として知られる生物学的な睡眠
  ・覚醒サイクルの混乱による過度の疲労と深刻な眠気は夜間労
  働者が最も一般的に口にする健康上の問題です。夜業・交代制
  労働が消化系障害や神経系障害、循環器系疾患のリスク、性と
  生殖に関わる健康問題と関係する場合があることも示されてい
  ます。
   「夜業」


   夜勤交替制労働は発がん性が高い

   2007年WHOの国際がん研究機関は、「交代勤務はおそ
  らく発がん性がある」と認定しました。発がん性因子の5段階
  の基準の2番目です。1番目は、人間でも動物でも発がん性が
  確認されたアスベストなどなどで、夜勤交替制労働は2番目に
  発がん性が高く、動物実験では発がん性の根拠があると指摘さ
  れました。
   夜勤交替制労働者ががんになるリスクが高い原因は、乳がん
  は夜勤中の人工照明にさらされることによって夜間時間帯に分
  泌される抗酸化作用や坑腫瘍作用のあるメラトニンが抑制され、
  エストロゲンが分泌されることによると推測されています。デ
  ンマークでは元夜勤交替制労働者の乳がん患者が労災認定され
  ました。
   男性の場合は、メラトニンが抑制されて、男性ホルモンであ
  るテストロゲンの分泌が上昇して全立腺がんになるリスクが高
  いと言われています。」
         (2016年 航空労連の政策資料から)



  ∇特集 深夜労働の実態と法的規制のあり方
    労働法律旬報 2011.4.10
  ・深夜業の実態の変化と法規制の重要課題
    吉田美喜夫
  ・医師の深夜労働の実態と問題点
    池田 寛
  ・看護師の深夜労働の実態
    中野千香子
  ・パイロットの深夜勤務
    長澤 利一
  ・郵便内務勤労働者の深夜労働の実態と労働時間規制
    廣岡 元穂
    「新夜勤」は、「16時間勤務」や「新夜勤」には存在した
   “いのち綱”ともいえる特例休息が廃止され、仮眠時間もなく、
   実労10時間、拘束11時間勤務(夜10時から翌朝9時まで)
   を昼夜逆転で4日間繰り返す勤務である。……
    日本郵政株式会社の異常な深夜勤務における病気休暇者の推
   移をみると、とくに深夜勤導入後の2004年以降、毎年83
   0人、985人、1068人、1085人(公社、各年7月1
   日現在休職者の者、毎年11月人事院へ報告)とうなぎ登りの
   上昇となっている。これはいかに深夜勤の導入が健康に著しい
   影響を与えていることがわかる。


  ∇夜勤交代勤務の何が悪い? どうすればいい?
    労働科学研究所 慢性疲労研究グループ 松元 俊
    「労働と医学」 No.113  2012

    夜間に働くということはどういうことを意味するのか。体温
   は24時間のリズムがあって、人は夜になったら体温が低くな
   り、眠気が生じて眠るという生理をもっているわけです。夜勤
   はそれに反して、ちょうど眠くなるところで、本来なら睡眠に
   適したタイミングで、その規制のために断固とした方針が打ち
   出されていないだけでまさしく働かなければいけないのです。
   また人間は夜勤に完全には適応できないということは、過去の
   研究から明らかになっています。


  ∇特集 夜勤・交代勤務
    「労働の科学」2001年12月号
  ・深夜業の労使ガイドラインと今後の課題
    中桐 伸五

    最近の夜勤交代制改善の国際動向としては、夜業に関するI
   LO条約・勧告(1990年)、労働時間の設定に関するEU
   指令(93/104/EC)(1903年)、オランダにおける
   労働時間および休憩に関する法改正(1996年)などが注目
   すべき動きとしてあげられる。
    ILOとEUの動きの特徴は、夜勤交代制改善のための総合
   基準を打ち出した店である。総合基準としては、少なくても1
   1時間の勤務間隔時間の確保、残業の回避、深夜に不適時の配
   置転換、妊娠時の配慮、社会的なサービスを供与する制度、勤
   務計画作成への労働者参加、労働者自身が要求した場合の無料
   健康評価の提供、1日平均8時間(有害労働の場合1日上限8
   時間)・1週上限48時間労働(EU)、1日6時間以上の労
   働では休憩の確保(EU)、1年間に4週間の有給休暇(EU)
   などがあげられる。
  ・鉄鋼産業労使による深夜業に関する自主的
   ガイドライン
    幸野 直道
  ・化学工業労使による深夜業に関する自主的
   ガイドライン
    大脇良夫・鈴木且己
  ・電器産業における交替・変則勤務に関する
   深夜業に関する自主的ガイドライン
    内田 勝久
  ・自動車関連製造業の労使による深夜業に関する
   自主的ガイドライン
    木村 勝


     ◇ 論 説 ◇
  深夜交替制労働の現状と法規制の課題
    吉田 美喜夫  立命館法学 一九九六年四号

    たとえば二〇三名の過労死事例の調査の結果、深夜勤務従事
   者が六二例を占めていたという報告にも見られるように、深夜
   労働ないし深夜交替制労働が過労死の有力な原因になっている
   にもかかわらず、その規制のために断固とした方針が打ち出さ
   れていないだけでなく、むしろ逆に、女子の深夜業禁止の撤廃
   が「規制緩和」の一環として議論されている状況である。
    たしかに、企業間競争が激化しているという事情の下で、操
   業時間を維持ないし延長しようとする要請と労働時間の短縮と
   いう要請とを両立させるためには、交替制を採用する必要もあ
   ろう。・・・
    しかし、交替制が容認できるからといって、深夜時間帯も含
   む交替制を同列に論ずることはできない。後述のように、深夜
   交替制労働は大きな弊害を伴うからである。このことは一般に
   知られている事実であるにもかかわらず、深夜交替制労働に対
   して従来一般的な法規制が行われて来なかっただけでなく、八
   〇年代半ば以降の労働時間法制の改正の際にも規制は加えられ
   なかった。
    しかし、最近の「24時間型社会」の進展の下では、今以上
   に深夜交替制労働が労働者一般の問題となる可能性があるだけ
   でなく、第三次産業では、不規則で昼間労働と異なる労働の質
   ・量の交替制が普及する可能性もある。

   「深夜交替制労働の現状と法規制の課題」


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